2015 Fiscal Year Research-status Report
小中一貫校における居場所形成の構造化に関する研究‐空間選択の多様性とその仕組み‐
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15K06353
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
西村 伸也 新潟大学, 自然科学系, 教授 (50180641)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 小中一貫校 / 居場所形成 / 空間選択 / コンフディクト / 環境行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大きな社会的問題となっている小学校や中学校での児童・生徒のいじめと不登校の増加に対して、「中一ギャップ」の解消を目指している小中一貫校を対象として、児童・生徒の居場所形成の多様性とその行動との関係・空間の特性を明らかにすることを目的とする。 子ども達が時間をずらして距離を保ちながら自分の居場所をつくっていること、多様な場所にそれらの居場所が点在し児童・生徒の行動で結ばれているという特有な行動様態に着目して、学校がすべての児童・生徒にとって適正な環境となるためにも、個人と集団が学校環境の中で折り合い、子供達相互のコンフリクトを回避する予防的な学校環境を計画することを企図している。 平成27年度は、施設一体型校である小中一貫校・三条市立嵐南小学校・第1中学校を対象に調査を行った。生徒の居場所選択の特徴的な行動を捉えるための、アンケート調査と観察調査を平成27年7月から9月にかけて行った。今回の調査からは特に、学級ごとに移動にかかる時間が異なる。つまり、その集団間の距離が短い休み時間の時には狭くなる傾向を持つこと、個人で行動する生徒は、全体の移動集団の中で、後方に位置を占めて移動での時間をずらしていること等がわかった。 これらの調査・分析結果は、平成28年度日本建築学会大会に「教室移動時の生徒の過ごし方 施設一体型小中一貫校における児童生徒の行動特性その1」・「小中の接続空間での児童生徒の選択と行動 施設一体型小中一貫校における児童生徒の行動特性その2」とする2編を投稿して、発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は三条市立嵐南小学校・第1中学校のアンケート調査と行動観察調査を行った。また、平成28年度に向けて、広島県府中学園、大野学園、呉中央学園の予備調査とヒアリング調査を行った。 三条市立嵐南小学校・第1中学校に対する調査では、クラスの生徒に対するアンケート調査で、学校内での行動とその居場所について、いつも集団でいる場所、ひとりでいる場所、移動中に立ち寄る場所、移動の経路、先生と接触する場面と場所、教室移動の時の経路と移動集団の中での順位、共有空間の使い方等、児童・生徒が日常の生活で展開する行動の特性を捉えた。 観察調査では、アンケート調査の結果を受けて行動観察する場所と学年・クラスを選んで、生徒の行動観察調査を行った。平成27年度は、小中一貫校の教室周りと児童・生徒がよく行く拠点的な場所であるメディアセンターに焦点をあてて、そこでの活動・行動の実態を記録した。これらの活動行動の様態を平面図にプロットして、「時間・空間の多様な選択」の特徴を詳細に捉え、集団と個人の接触・回避という2つの場面での行動として、選択された場所とともに記録した。 今回の調査では、生徒は教室移動の際に時間の使い方を考慮して移動経路を選択していること、特に小学校棟は生徒が他者との距離を調整するための選択肢として、移動経路に利用している傾向が捉えられた。、児童が中学校棟を利用する状況を捉えることはできなかったが、メディアセンター周辺では生徒に興味を示す児童の行動が多く見受けられ、それらの行動が低学年と高学年では異なることも確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、小中一貫校を対象にして、アンケート調査・行動観察調査に加えて教員へのヒアリング調査を行い、児童・生徒の居場所と行動との関係を捉える。 特に、小中の共有空間となるメディアスペース・パッサージュ等のオープンスペース・体育館、教室や廊下を居場所とする生徒集団の特徴的な行動様態に注目する。共有空間の使い方等、児童・生徒が日常の生活で展開する行動の特徴はアンケート調査で捉える。観察調査では、アンケート調査の結果を受けて行動観察する場所と学年・クラスを特定し、4日間にわたって生徒の行動観察調査を行う。昼休みの時間に生徒が集まるメディアスペースやパッサージュ等の空間で、どのように異学年がコミュニケートし領域選択をしているのかを観察調査から捉える。 児童・生徒が形成する集団の大きさが、その居場所形成に大きく影響していると考えられ、いつも集団でいる場所、ひとりでいる場所、移動中に立ち寄る場所、移動の経路、先生と接触する場面と場所、教室移動時の経路と移動集団の中での順位等、各場面での児童・生徒の行動様態を記録する。「時間・空間の多様な選択」に着目し、集団と個人の接触・回避という2つの場面での行動を、選択場所とともに記録する。特に教室からの移動に際しては、児童・生徒の行動に特徴的な仕組みがとらえられており、移動教室になる共有空間も含めて、重点的に観察調査を計画している。 さらに、次年度の調査校を選定するために、他の小中一貫校への予備調査・打合せを重ねて行う。
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Causes of Carryover |
平成27年度に計画・予定していた品川区の小中一貫校への調査が適わなくなり、他の品川区の小中一貫校にも調査の可能性を聞いたが、品川区として調査に対応できない旨の回答を得た。 そこで、調査が比較的依頼しやすいと考えられた新潟県内の三条市立嵐南小学校・第1中学校を調査対象としたために、調査を行った学生4名は宿泊の必要がなくなり、計画していた交通費と宿泊費にあてていた額を平成28年度に繰り越しとした。 平成28年度は改めて丁寧に調査依頼を行うことが必要で、そのために広島への交通費・宿泊費がかかる予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、広島の小中一貫校を調査し、そこではヒアリング調査を新たに加えることを計画している。さらに、調査を行う学生の人数を増員して、詳しい児童・生徒の行動観察調査を計画している。 小学校と中学校の、特に共有空間となるメディアスペース・パッサージュ等での行動や、廊下などの教室まわりの空間での行動は、児童と生徒がお互いに交わる可能性のある場所として、その行動特性の詳細な観察調査を行う。そのための調査日数を当初の予定より延長するので、その差額費用として平成27年度の繰り越し分を使用する予定である。 また、共同研究者として、高橋鷹志教授に棒田恵助教を加えた3人体制で進めていくことになった。調査の実施や東京を拠点としている高橋鷹志教授との研究打合せにかかる旅費としても充当することを計画している。
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