2015 Fiscal Year Research-status Report
地域施設ストックの価値を人口分布,利用率,近隣ストックから評価する手法の開発
Project/Area Number |
15K06370
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
吉川 徹 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (90211656)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 期待来訪者数 / 離散選択モデル / 地域施設 / 公共施設 / 仮想都市 / 最適施設配置 / 移動距離 / ロジットモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
モデルについて,需要を決める利用率の減衰と,既存モデルの性質から要件を整理して,モデルの概要を決定した. まず,利用率の減衰から見た施設類型を想定した.利用率の減衰から次の3種類の施設類型への分類を前提とした.(1)小中学校など利用率の減衰がない地域施設:施設が対象とする年齢等の人口分布がそのまま需要分布となる.(2)認知症対応型通所介護施設など,定員があり,申し込み順に利用者が決定され,近い方が望ましい施設:需要が実際には複雑な関数であるが単純な減少関数に見えることから,(3)に統合することとした.(3)図書館や商業施設など,距離や利用料金によって利用率が減衰する施設:離散選択モデル,特にロジットモデルを基礎とすることの妥当性を確認した. 次に,既存モデルの性質から見たモデル要件整理を行った.本研究では消費者余剰,ロジットモデルに代表される離散選択モデル,最適施設配置を総合した上で,既存建築ストックの特性に相応しいモデルの要件を整理した.類型(1)では,最適施設配置の平均距離が建築物の除却によってどれだけ延びるかを指標とすることを提案した.類型(3)ではこの方法は適用できない.そこで本研究課題では,人口分布と距離減衰によって地点ごとに変動する需要の多少によって価値が変動する,建築ストックならではの独自性を組み入れた指標の要件を整理した.その結果として,従来から本研究で提案している期待確定効用,期待総効用すなわち消費者余剰に加えて,期待来訪者数が指標候補として新たに浮上した. そこで,これらの指標の挙動について,理論的検討と仮想市街地におけるシミュレーションで探求を行った.また,空間移動のモデル化の基礎として利用者から施設までの距離を最適化する交通網のあり方を検討し,徒歩,バス,高速交通機関からなる段階的な交通網を有する都市における移動時間の詳細なモデル検討を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに見いだされた理論的検討が必要な課題に関して,重要な進展があり,研究開始時の想定よりも多様な地域施設について評価指標を定義する可能性がより確かなものとなった.理論的検討,及び仮想市街地におけるシミュレーションの結果,従来から用いられている平均距離と,消費者余剰,期待来訪者数は異なった挙動を示すことが確かめられ,これは重要な進展であると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
モデルの精緻化と実証研究の準備を行う.仮想市街地における理論的検討とシミュレーションを通じてモデルを精緻化するとともに,最終年度に予定する実証研究のため,対象地域のデータ整備を進める. まず,前年度の理論的検討とシミュレーションの結果を受けて,より精緻に最適配置を算出するための理論的検討とシミュレーションによって,モデルの精緻化を図る.モデルの精緻化にあたっては,利用者が最近隣施設を利用する場合と,利用者がより遠くの施設も利用する場合の両方を検討対象とするが,後者については理論的な困難さも予想されるので,現時点ではその適用可能性を見極める. この検討にあたっては,ネスティッドロジットモデルの適用可能性も考慮するが,実用上に問題も予想されるので,その場合には単純なロジットモデルに限定した検討を行う.また距離減衰を考慮した領域間距離の近似計算に関する既往研究の適用可能性を検討することによって,最終的な計算負荷の軽減の可能性を探求する.また,代表的な理論的距離として,ユークリッド距離とマンハッタン距離の違いにも配慮する.特に後者の検討によって簡易に実態に近い計算が期待できるが,一方で近似計算に関する既往研究の適用可能性が損なわれる危険性もあるので,そのトレードオフに配慮した検討を進める.これに併せて,実際の道路網と,より計算が容易なユークリッド距離あるいはマンハッタン距離等の理論的な距離を採用した場合の違いを,既往研究なども踏まえて連携研究者の助言を得ながら分析し,最終年度に予定する実証研究に備える. さらに,過去に蓄積したデータを含めて,対象地域のデータ整備を行う. 関連して,国内外で研究者との研究打ち合わせと実地調査によって研究情報を収集する.
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Causes of Carryover |
当初,ある程度の規模のシミュレーションなどを想定していたが,理論的に注目すべき着想である期待来訪者数の有効性検討の必要が生じ,理論的検討に重点を置いた.このため,機器,データの導入を最小限に留めたため,一部を謝金などに充当したが,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これについては,得られた理論的検討結果を中心に国際的なレビューを受けるために必要となる様々な経費や,更なる精緻なシミュレーションに必要とされる機材導入,さらに最終年度に必要になると予想されるデータや追加の謝金に使用する.
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Research Products
(2 results)