2017 Fiscal Year Research-status Report
フランスの地域特性を反映した市街地環境制御に関する研究
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15K06384
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
岡井 有佳 立命館大学, 理工学部, 准教授 (50468914)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | フランス / 都市計画規制 / 建築規制 / PLU / 建築許可 / 建築確認 / 地区計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フランスの開発・建築規制に着目し、基礎自治体が作成する地域ごとの固有の計画である「都市計画ローカルプラン(PLU)」と建築許可制度の制度面、および、運用面からの実態把握を通して、地域特性に対応した市街地環境を制御・誘導する仕組みを明らかにし、日本の開発・建築規制にとって参考となるべき対応策を提案することを目的としている。 平成29年度は、昨年度までに実施した法律や文献等の収集・分析および国の担当者へのインタビュー調査などを踏まえ、①専門家へのインタビュー調査および、②複数の基礎自治体から策定される都市計画ローカルプラン(PLUi)の事例としてSaint-Quentin-en -Yveline都市圏共同体(CASQY)を選定し、現地調査およびインタビュー調査を行い、関係資料を入手した。①については、PLUなど都市計画文書を中心とする都市計画規制を専門とする研究者(Melotフランス国立農学研究所研究員、Santamariaパリ7大学教授やMaulatパリ1大学助教授ら)と複数回の議論を行い、PLUの現状と課題などについて幅広く意見交換を行った。②については、イル・ド・フランスで初のPLUiを策定した広域行政組織であるCASQYを対象に、複数の基礎自治体間で規制力のある都市計画文書の策定にあたりどのような調整をしながら承認に至ったのか、そのプロセスおよび境界の土地利用規制の実態などを把握した。ただし、CASQYのPLUiは2017年に議会で承認されたものの、構成メンバーである1つの基礎自治体から法的不備を指摘され現在訴訟中となっており、その動向も含めて調査中である。 日本においては、昨年度までに実施した地区計画に関する研究を、査読論文としてとりまとめ、建築学会に公表した他、都市計画規制に関する近年の方向性などについて、11月に国土交通省にインタビュー調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は、主に、専門家へのインタビュー調査や文献調査を中心に実施し、フランスの都市計画規制・建築規制全体の概要や傾向に加え、PLUの効果や課題などを把握したため、現地調査としては第2段階の実施にとどまり、第3段階の調査を実施するに至っていない。また、今年度現地調査を実施したSaint-Quentin-en -Yvline都市圏共同体のPLUiが訴訟中となっており、この結果を含めて分析するためには、平成30年度においてさらなる研究を継続する必要がある。この要因などを分析することは、PLUiの課題の一面を明らかにするのに有益と考えるからである。現在、ストラスブールメトロポールに加え、Saint-Quentin-en -Yvline都市圏共同体の事例も含めて、フランスの都市計画規制および建築規制の制度面および運用面の把握・分析を行っており、その成果については、学会への投稿を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、当初予定してた第3段階の調査として、2つの事例調査の2回目のインタビュー調査を実施し、前回の調査で不十分だった点を補完するとともに、分析を行うなかで明かとなった課題などに関してさらに詳細調査を行う予定である。また、これらを踏まえ、日本の建築規制にとって参考となるべき論点を抽出する。
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Causes of Carryover |
今年度は後期から学外研究としてフランスに滞在する機会を得たため、当該研究費を使用せずに、フランスでの現地調査が可能となった。そのため、旅費にあてる予定だった額をそのまま繰り越すこととなった。一方で、事例として選定したSQYにおいては、訴訟という予測しない状況が生じており、来年度も研究を継続する必要があることから、残額については、来年度、フランスへの海外渡航費として使用する予定である。また、1年延長することで、PLUそのものに限らず、都市計画制度全体のけるPLUの位置づけ、役割、課題などについても総合的に分析する予定である
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