2015 Fiscal Year Research-status Report

歴史的観光都市の「場所の消費」に対する観光政策と都市政策の計画論的統合

Research Project

Project/Area Number	15K06385
Research Institution	Ryukoku University
Principal Investigator	阿部大輔龍谷大学, その他部局等, 准教授 (50447596)
Project Period (FY)	2015-04-01 – 2018-03-31
Keywords	場所の消費 / 場所の商品化 / テーマパーク化 / 観光植民地化 / ゲストハウス / バルセロナ / ベネチア / 京都
Outline of Annual Research Achievements	2015年度は、場所の消費の観点から見たベネチア/バルセロナ/京都のこれまでの観光地化ならびに都市再生政策の系譜の把握を図った。具体的には以下の2点を重点的に実施した。 (1)国内外の事例収集ならびにデータベースの構築を行った。また、関連研究論文を収集した上で国内外における既往研究成果を整理し、これまでの論点ならびに研究上の空白部分を特定した。 (2)ベネチア・バルセロナ・京都を対象に各種調査（文献収集・フィールド調査・インタビュー調査）を実施し、観光地化の現状を把握した。フィールド調査に際しては、地区レベルでの用途および居住機能の変容に着目し、時代ごとに見た各都市の観光活動の強弱とそれらが地区に及ぼした影響の把握に努めた。8-9月にベネチアとバルセロナの現地調査を行い、現段階での地区内商業の様態の同定を図った。ベネチアでは関連図書を入手するとともに、観光経済研究国際センターCISETのWebよりアクセス可能な基礎データを整理した。バルセロナでは、観光地化に対抗する住民自治運動を展開しているFem Plaçaに聞き取り調査を行い、観光産業の伸張がコミュニティに及ぼしつつある現状の一端を把握した。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason ベネチアならびにバルセロナの現地調査で予定していた年代ごとの旧市街の住宅地図は部分的にしか入手できなかったこと、ベネチアのCISETでの文献調査が実施できなかったこと等、計画通りに進まなかった点もあるが、両都市の観光地化の歴史的な経緯や現状についての資料を一定程度入手し、都市再生の試みの歴史的展開ならびに空間的再生についての考察を進められたこと、観光地化と都市政策を統合する際の論点を洗い出すことができた。次年度は空間的再生の実際と観光活動の関係性の検討から開始する等、調査課題もさらに具体的に明確になった。これらのことから「おおむね順調に進展している」と判断した。
Strategy for Future Research Activity	時代ごとに見た各都市の観光活動の強弱とそれらが地区に及ぼした影響を包括的に明らかにする。前年度に把握した空間的再生だけでなく、一連の再生戦略の実施による既存コミュニティの変化の様態に常に焦点を置き、強い観光地化の圧力を背景に地区の居住機能や商店の構成に大きな変化が出る「観光植民地化」の発生の有無・強度を特定し、観光地化に起因して現在深刻化している問題ならびに今後顕在化することが高い蓋然性で予想される問題を推論する。
Causes of Carryover	3月の欧州調査が復活祭と重なる日程でしか実施できず、その間は調査も滞りがちになるため、当初の滞在日程を短縮したことから残額が生じた。
Expenditure Plan for Carryover Budget	次年度の調査に用いる。