2015 Fiscal Year Research-status Report
ル・コルビュジエの建築理論における古典的原理と近代的世界認識を巡る思潮研究
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15K06396
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
白井 秀和 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40206272)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 一也 石川工業高等専門学校, 建築学科, 准教授 (90360859)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ローマ / ル・コルビュジエ / 古代 / 近世 / 近代 / 廃墟 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究代表者白井及び、研究分担者村田ともに、ル・コルビュジエの建築思想に関わる文献収集を中心に研究を行ったが、とりわけ、白井は、イタリア・ローマ等での海外調査を実施して、ローマ建築(古代及び近世・近代・現代)及び、フィレンツェのルネサンス建築(とりわけミケランジェロの建築)が、ル・コルビュジエの建築観における、古典的原理と近代的世界認識の双方に及ぼした影響について、実際の建築を照査しつつ、考察を試みた。その際、大量に出来したイタリア語・フランス語の最新研究書を目の当たりにして、現在はその整理に多くの時間を費やしている。そこから浮上する問題は、ル・コルビュジエにとって、やや理論的と言える古代ギリシャ建築は言うに及ばず、とりわけ雄大で圧倒的な古代のローマ建築が織り成す廃墟的意味の、建築的解釈の問題である。古代の廃墟が、ルネサンスによって再生し、その後近世のバロック及び新古典主義における伝統の継続を経て、まさしく近代のローマで繰り広げられた、新しい世界観・世界認識に、いかに作用したかが問われることになる。このことは、建築の制作論に直結するものであり、創造と崩壊(廃墟化)の、調和のとれた循環、という「建築の保存・復元(復原)」にも関わる大きな問題である。ローマという、かつてかのウィトルウィウスが建築理論を展開した都市でのこうした研究は、建築による近代化という、ル・コルビュジエたち近代建築家の大きなテーマが、さまざまな時代の建築が並列する都市ローマにおいてこそ、その意義を担う、ということを考えさせてくれるであろう。村田は、今年度は、国内での文献収集を行ったが、来年度は、もうひとつの重要な都市パリにおいて、こうした白井の掲げた課題に応える予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上に述べたように、古代都市・近世都市・近代都市といった複層した相貌を持つローマという都市が与えた、ル・コルビュジエへの大きな影響が、この研究のテーマである。このテーマは、古典的原理と近代世界認識との交錯を考える上で重要であり、その点からも、ローマでの実地研究は、十分に意義があったと考えうる。
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Strategy for Future Research Activity |
入手した大量の新刊書籍の読み込みを始めとして、今後も実地調査を踏まえて、ル・コルビュジエにとっての、古代と近代の相克・対立あるいは調和・共存、という困難な問題を深く洞察して、ル・コルビュジエに代表される近代建築家の、古代との好ましい戦い(例えば、ル・コルビュジエは、「アクロポリスが、私を反逆者に仕立てた。E stata l'Acropoli a fare di me un ribelle.」と語っていた)の意義が解明されるのではないだろうか。こうした指針を導きの(アリアドネの)糸として、今後とも研究を進めて行きたい。
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Causes of Carryover |
平成27年度に若干の未使用額が生じたのは、書籍費等が残ったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き、文献収集と現地海外調査を行う予定であり、次年度使用額はその費用の一部に充てる。
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