2016 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける近代都市空間の生成過程と日本的社会=空間構造の影響に関する研究
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15K06403
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
伊藤 裕久 東京理科大学, 工学部建築学科, 教授 (20183006)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本統治期 / 東アジア / 近代都市空間 / 空間=社会構造 / 日本の影響 / 居住形態 / 商業空間 / 宗教空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、戦前期の地籍図・土地台帳の分析によって韓国・木浦居留地に隣接して形成された韓人村・竹洞の都市所有・土地利用状況を検討した成果を日本建築学会計画系論文集に発表した。そこでは、居留地時代からの日本人による土地経営(借地・借家経営、住宅地開発)が浸透していたことが判明した。同時に、そうした近代的な土地経営が朝鮮人の土地所有・利用概念を変化させ、投機的な土地集積や借地・借家経営の進展に触媒的な役割を果たしており、日本人の集住した居留地が周辺韓屋地区の空間=社会構造に大きな影響を与えたことが解明できた。 続いて、中国・大連において現地調査を実施して、日本人街区の連鎖街商店街(日本人よる建設→中国人の居住)、旧ロシア人街区の集合住宅(ロシア人による建設→日本人による改修→中国人の居住)、華人街の街区構成(日本人による街区形成→中国人の建設、居住)など、商業空間・居住空間を比較検討した。とくに華人街は、日本統治時代の都市計画によって二段階で建設されており、日本的な両側町的構成を採用した側面と中国的な街区単位の構成が重層していることが分かった。これらは現在再開発によって消失する可能性が高いため悉皆的に写真撮影と一部図面を作成している。 台湾については、今年度は、対岸の福建省・広東省の伝統都市を現地調査し、台湾都市の原景となった都市構造(商業空間、宗教空間、居住空間)の特徴について新たな知見を得た。その関連で、昨年度調査した台南西市場および韓国の市場を対象とした近代都市化過程について都市計画学会都市計画論集や日本建築学会大会で発表している。 最後に、日本統治期において、これらの東アジアの諸都市と交流の深かった北九州市(門司港)・下関市について近代都市に関する基礎的な資料を収集し現地を視察した。 全体として、最終年度の調査研究に向けて重要な研究成果がえられたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、九州大学(大連工科大学)や筑波大学の協力を得て、中国・大連において日本的な社会=空間構造を抽出するための5つの分析指標、とくに1.街区と町割、2.市場と商業空間、3.住居形態の観点から、日本人街、ロシア街、中華街を対象に本調査を実施することができ、研究を大きく進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、台湾の諸都市(花蓮・高雄などを予定)について分析を進めるとともに、これまで現地調査を重ねてきた中国(大連)、韓国(木浦)、台湾の諸都市を5つの分析指標(1.街区と町割、2.市場と商業空間、3.土地所有、4.住居形態、5.宗教施設と祭礼空間)にもとづき比較検討する。そのための補足調査を実施することを考えている。
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Causes of Carryover |
本年度は、大連をはじめ現地調査の実施が中心であり、調査データの整理(CAD図面の作成)や分析は、最終年度に持ち越した部分があった。そのための作業に必要な経費として次年度使用額が生じている
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額によってこれまでの調査データを整理・分析することで、最終年度の補足調査の結果とあわせて、全体の比較検討を実施する計画である。
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Research Products
(6 results)