2017 Fiscal Year Research-status Report
動力学的回折効果を考慮した電子線ホログラフィーによる電磁場解析法の確立
Project/Area Number |
15K06419
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
赤瀬 善太郎 東北大学, 多元物質科学研究所, 講師 (90372317)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 電子線ホログラフィー / 動力学的回折効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、電子線の多重散乱を考慮した動力学的回折理論を用いて、結晶試料内部の電子線の位相変化をより正確に把握した解析手法を確立し、電子線ホログラフィーの適用範囲の拡張を図ることを目的としている。 試料を通過した電子線の位相は真空を通過した電子線の位相に対して変調しており、その差は結晶の平均内部ポテンシャル×試料厚さ×相互作用定数という式で近似的に計算される。さらに結晶性材料ではブラッグ条件近傍では回折の効果で位相の進み方が上式からずれることが経験的に知られているが、系統的な実験による説明はこれまでなかった。そこで本研究では楔形に加工した単結晶試料を用いて回折条件を変化させながらホログラムを撮影することで、試料厚さと回折条件の二つのパラメータに対して、電子線の位相変化を実測し、ブラッグ条件近傍における位相変化率の回折条件依存性を調査した。またこの現象を理解するために、電子の多重散乱を考慮した動力学的回折理論(Bethe法)をもちいて、結晶中の波動関数を計算することで位相変化のシミュレーションを行い、実験結果と比較した。このシミュレーンプログラムは、従来電子線回折強度を計算する目的で作成していたものを、本プロジェクトにて、電子の位相変化を計算するように改造したものを用いている。 28年度までの電子線ホログラフィーによる実験では、回折条件の制御をゴニオメーターの試料傾斜機能を用いて行っていたが、29年度の実験では、より精密に回折条件を制御するために、偏向コイルを用いて入射電子線の入射方向を変化させることで、回折条件を制御した。この手法を用いてブラッグ反射条件前後で回折条件を細かく振って、電子線ホログラムの撮影・解析を行い、シミュレーションとの比較を行った。その結果、ブラック条件近傍での位相の複雑な変化は、結晶中で励起されるブロッホ波の励起率に依存して生じる様子が理解できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題で用いているシミュレーションプログラムはフォートランで書かれた自作のプログラムであり、可変パラメータや出力対象を変えるたびに書き直しが生じるため、想定より解析がやや遅れている(具体的には励起誤差に対する位相変化量のプロットの計算)。
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Strategy for Future Research Activity |
・解析プログラムの中で用いている平均内部ポテンシャルの取り扱いを見直して、計算精度の向上をはかる。 ・発表に最適な国際会議(第19回国際顕微鏡会議)が30年度に開催されるため、本課題を30年度まで延長し上記会議にて発表を行う予定。また、成果をまとめて論文発表を行う。 ・過去に解析した高鉄濃度ナノ結晶軟磁性材料のホログラフィー解析結果にたいして、本課題から得られた知見を加えて論文にまとめる予定。
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Causes of Carryover |
成果発表に最適な国際会議(第19回国際顕微鏡会議)が30年度に開催されるため、旅費および参加費として使用する。また論文作成のための諸経費として使用する。
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Research Products
(1 results)