2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K06423
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
徐 ぎゅう 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (90273531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
張 倹 京都大学, 原子炉実験所, 技術職員 (30379010)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 金属 / 欠陥 / ヘリウム / 引張強度 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属中の転位にトラップされるヘリウムが高温または転位の移動により転位から脱離ができると考えられる。転位から脱離されたヘリウムがもし再び他の欠陥にトラップされなかったら、試料の表面から出ていく。本研究では、ヘリウムの脱離挙動を調べるため、引張試験機にガス分析の四重極型質量分析装置を設置した。 転位だけを導入した鉄の引張試料に弾き出し損傷ができない100eVのヘリウムを1.0×1020 ions/m2注入し、引張ながらヘリウムガスの放出を測定した。転位を導入した鉄に比べ、ヘリウムを注入した試料の伸びが増加したことと降伏応力が減少したことが再確認された。しかしながら、ヘリウムを注入した試料に対して、明確なヘリウムの放出ピークが観察されなかった。これは引張前に転位にトラップされたヘリウムが引張中に転位から脱離され、引張中に形成された原子空孔に再びトラップされたことを示唆している。 また、鉄中の原子空孔とヘリウムの相互作用及びに水素に及ぼす影響を調べた。鉄中の転位にトラップされたヘリウムの放出温度が800 K付近であった。これに対して、原子空孔及び原子空孔集合体にトラップされたヘリウムの放出温度はそれぞれ1200、1500 Kであった。鉄中に水素を注入しても、欠陥によりトラップされたヘリウムの放出ピークが変わらないので、転位または原子空孔にトラップされているヘリウムと水素の相互作用は弱いことが分かった。さらに、水素とヘリウムの照射順番が試料中の水素の捕獲量を影響する。ヘリウムが先に照射した試料が水素をトラップ量は増加した。ヘリウムが欠陥との相互作用は強いので、ヘリウム照射によって形成された格子間原子と原子空孔の再結合が少ない。従って、水素とヘリウム照射の損傷量が同じでも、ヘリウム照射した方が残った欠陥の量が多いと考えられる。以上の結果を国際雑誌論文として投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、京都大学原子炉実験所に設置されている引張試験機にガス分析装置を購入し取り付けた。また、テスト実験でガス分析装置の動作確認をし、実際の引張試験中に応力とひずみ及びガス量のデータを取得した。また、引張試験片の微細組織変化の解析も行っている。この結果、次年度以降は異なる条件下でヘリウムと欠陥の相互作用、それに及ぼす水素の影響についての研究に問題なく行えることから本判定とした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通り研究が進展しており、このまま計画通りに研究を遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
当初、計算機シミュレーションによる金属中の欠陥とヘリウムの相互作用について、外国へ出張し、外国の共同研究者と議論する予定をしたが、別の打ち合わせでこの議論をしたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に生じた次年度使用額を含む平成28年度の請求助成金の使用計画は以下の通りである。 実験においては、引張試験の消耗品、試料の組織観察に使われる電子顕微鏡などの消耗品の購入充てると共に、研究成果の発信と最新情報の収集のため、国内外の学術会議に参加するための旅費と参加費、更に論文発表の経費として使用することを考えている。
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Research Products
(8 results)