2016 Fiscal Year Research-status Report
シリコンおよび窒素を添加したダイヤモンドライクカーボンの新規機能の発現と高機能化
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15K06432
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
中澤 日出樹 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (90344613)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カーボン材料 / プラズマ化学気相成長法 / レーザーアブレーション法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、従来のDLC膜に比べて機械的特性、摩擦摩耗特性、熱的安定性、可視光透過性および電気的特性が向上するシリコン(Si)および窒素(N)を共添加したDLC(Si-N-DLC)膜の研究開発を行う。また、膜特性と組成・化学結合状態・構造との相関関係を詳細に調べることで、SiおよびNを共添加した新規DLC膜のもつ機能を最大限に発現させるための知見を得ることを目的とする。プラズマ化学気相成長(CVD)法やレーザーアブレーション法により作製条件を変化させてSi-N-DLC膜を作製し、化学結合状態・組成・構造と機械的・摩擦摩耗特性、電気・光学的特性との関連性を明らかにし、膜特性を向上させるための知見を得る。 N源およびSi源としてそれぞれ窒素ガスおよびメチルシランを用いたプラズマCVD法により作製したSi-N-DLC膜を評価した結果、以下のことが明らかになった。Si-N-DLCのsp3結合はN-DLCと比べて大きく、Si添加は膜中の化学結合状態制御に効果的である。特にNが関与する結合に関しては、Si添加によってsp2C=N 結合が減少しsp3C-N結合が増加すること、N含有量の増加に伴いSi-C結合が減少しSi-N結合が増加することがわかった。Si-N-DLCの光学バンドギャップはN-DLCに比べて大きくなり、N含有量の増加と共に増加する。Si-N-DLC/p-Siヘテロ接合の電流電圧特性を測定した結果、良好な整流特性が得られなかった。そこで、Si-N-DLCを真空中で加熱した結果、Si-N-DLC/p-Siヘテロ接合はN-DLC/p-Siヘテロ接合の整流比に比べて大きな値を示し、良好な整流特性を示すことを見出した。一方、N-DLC/p-Siヘテロ接合ではアニールによる整流特性の改善がみられなかった。このことからSi添加がアニールによる改善効果に強く関係していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、SiとNを共添加したDLC(Si-N-DLC)を作製し、諸特性と組成・化学結合状態・構造との相関関係を明らかにすることで、Si-N-DLCの更なる高性能化を実現することである。第一の目的は、Si-N-DLCの機械的・摩擦摩耗特性および熱的安定性の更なる向上である。第二の目的は、従来のDLCでは実現が困難であった高い誘電率、可視域での高い透明性、絶縁体から半導体までの幅広い電気的特性制御といった電気・光学的特性をSi-N-DLCに発現させることである。 N源およびSi源としてそれぞれ窒素ガスおよびメチルシランを用いたプラズマCVD法により作製したSi-N-DLC膜を評価した結果、以下のことが明らかになった。Si-N-DLCのsp3結合はN-DLCと比べて大きく、Si添加は膜中の化学結合状態制御に効果的である。特にNが関与する結合に関しては、Si添加によってsp2C=N 結合が減少しsp3C-N結合が増加すること、N含有量の増加に伴いSi-C結合が減少しSi-N結合が増加することがわかった。Si-N-DLCの光学バンドギャップはN-DLCに比べて大きくなり、N含有量の増加と共に増加する。Si-N-DLC/p-Siヘテロ接合の電流電圧特性を測定した結果、良好な整流特性が得られなかった。そこで、Si-N-DLCを真空中で加熱した結果、Si-N-DLC/p-Siヘテロ接合はN-DLC/p-Siヘテロ接合の整流比に比べて大きな値を示し、良好な整流特性を示すことを見出した。一方、N-DLC/p-Siヘテロ接合ではアニールによる整流特性の改善がみられなかった。このことからSi添加がアニールによる改善効果に強く関係していると考えられる。 本年度は、第二の目的である電気・光学的特性の制御に関して成果を上げたことから、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、レーザーアブレーション法およびプラズマCVD法によりSi-N-DLC膜を作製し、膜特性を評価する。レーザーアブレーション法を用いてSi-N-DLC膜を作製し、化学結合状態・組成・構造と機械的・摩擦摩耗特性または電気・光学的特性との関連性を明らかにし、膜特性を向上させるための基礎的な知見を得る。ターゲットには組成を変化させたSiまたは窒化シリコン含有グラファイトターゲットを用いる。N含有量を制御するために成膜中に窒素ガスを導入する。評価項目は、構造・組成・化学結合状態、内部応力、付着力、摩擦係数、摩耗量、電気抵抗率、電流電圧特性、誘電率、光学バンドギャップなどである。また、成膜中に水素ガスを導入し水素化Si-N-DLC膜を作製し機械的・摩擦摩耗特性および電気・光学的特性への水素の影響を調べる。レーザーアブレーション法で得られた基礎的な知見を元に、高周波プラズマCVD法による薄膜作製と特性評価を行う。構造パラメーターであるC原子のsp3とsp2の割合、C、Si、N間での化学結合(C-Si、C-N、Si-N)の割合、水素含有量を変化させるために、作製条件や原料ガスの検討を行い、さらにSi-N-DLCの機械的・摩擦摩耗特性および電気・光学的特性を評価する。Si源およびN源の各種原料を組み合わせて各供給量を制御することで、Si-N-DLC領域内で組成を変化させ、Si-N-DLCの構造パラメーターと機械的特性、摩擦摩耗特性、電気・光学的特性および熱的安定性の関連性を明らかにする。前年度、Si添加がアニールによる電気的特性の改善に強く関係していることを初めて見出している。Si-N-DLC膜のアニール条件の最適化ならびにアニールが膜特性や構造・化学結合状態に与える影響を明らかにし、Si添加による電気的特性の向上のメカニズムを解明し、更なる膜特性の向上を目指す。
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Research Products
(6 results)