2016 Fiscal Year Research-status Report
ハロゲン処理を組み合わせた革新的鋳型炭素化法によるポーラスカーボンの細孔構造制御
Project/Area Number |
15K06438
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
宮嶋 尚哉 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (20345698)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ハロゲン / 鋳型炭素化 / ポーラスカーボン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,金属イオン交換・吸着能を有するポリマーに対してハロゲン処理と焼成を行うことによって,ポリマーの熱安定化と鋳型の形成を同時に行い,引き続き水洗鋳型除去を行うことで,残炭率を増大させながら精密な細孔制御を達成するといった新規ポーラスカーボンの合成技術を確立することを目的とする。最終的には従来の鋳型法の最大の欠点である製造コストの大幅な低減と,鋳型法特有の構造規則性を活かしたポーラスカーボンの新たな用途拡大を目指している。 平成28年度は,原料前駆体としてセルロースカルボン酸塩(カルボキシメチルセルロース:CMC)に的を絞り,分子構造内のNa置換率や重合度などの異なる数種のCMCを選定し,得られた炭素体の炭素化収率ならびに細孔容量を評価することで本手法の有効性について検討した。合わせて,新たな用途展開として吸着式ヒートポンプ用の吸着剤としての利用を志向して,調製した炭素体の水吸着特性について調査した。 その結果,原料CMCのNa含有率が,炭素体の多孔度に対して大きく影響を及ぼすことが明らかとなった。また,炭素化過程で生成するNaIが鋳型源となるだけではなく,一種の賦活剤としても機能することで炭素体の高比表面積化を促すことが分かった。このように著しく比表面積および炭素化収率が増大するのは,I/Na=1となるようにヨウ素処理を行った時であり,同時に酸性表面官能基も多く炭素体表面に導入される結果,最も水吸着特性に優れるポーラスカーボンが得られることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の実験データをフィードバックすることで,引き続き本手法の有効性について系統的に調査することができた。新たな知見として,鋳型源となるハロゲン化アルカリ粒子がその融点以下の温度域においても炭素の賦活剤として機能することが示唆された。しかしながら,その核生成や粒子成長がハロゲン処理ならびに炭素化過程のどの時点で生じ,CMC原料マトリクス中にどのように分散していくのか等について不明な点も多く,今後,本研究の目的を達成させるためにも反応機構をしっかりと吟味・解明する必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
TEMや小角X線散乱などの手法によって細孔形成のメカニズムの解明を行い,より効率良く炭素化収率の増加ならびに細孔構築が達成されるための最適条件の絞り込みを行う。またある特定の条件下でハロゲン処理・炭素化して得たポーラスカーボンが優れた水吸着特性を示したことから,種々の水系用途に関する知見を得る予定である。
|
Causes of Carryover |
細孔特性評価に不可欠な吸着装置の不具合が生じ,当初計画していた国際学会発表を見送りその修繕に多くの費用が掛かった。その一方で,高価な原料・薬品などの購入が少なく全体としてこれらの支出分が抑えられた結果,繰越分が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度の消耗品の購入および吸着装置の改良などの費用に充て,首尾良く次年度の研究計画を遂行する予定である。
|