2016 Fiscal Year Research-status Report
ガラス蛍光体の発光イオン周辺局所構造及び母体構造の統合解釈と発光特性
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15K06441
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
渕 真悟 青山学院大学, 理工学部, 准教授 (60432241)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ガラス蛍光体 / EXAFS / XRD / 周辺局所構造 / 母体構造 / 空隙 / 濃度消光 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、「ガラス蛍光体の作製と光学特性の評価」、「EXAFS測定と高エネルギーXRD測定の統合解析」、「母体ガラスの空隙分布の推定」の研究を行った。 ガラス蛍光体の作製と光学特性の評価では、Pr3+添加ガラスにおいて、ガラス形成酸化物をTeO2としたガラスを作製し、発光スペクトル測定をおこなった。発光スペクトルはTeO2系ガラス、GeO2系ガラス(昨年度作製)、B2O3系ガラス(昨年度作製)で変化したが、これらは、ラマン測定及びFTIR測定より得られたフォノンスペクトルと比較することによって、ガラス母体のフォノンエネルギー変化で説明できた。 また、平成27年度に作製したEXAFS解析結果と高エネルギーXRD解析結果を統合して解析するプログラムを用いて、本年度は、実際に、Sm3+ホウ酸系ガラス(Bi2O3-B2O3系、ZnO-B2O3系、CaO-B2O3系)に対して、Sm3+イオンがガラス母体中のどの位置に存在しているのか推定し、立体モデルを作製した。 さらに、EXAFS測定と高エネルギーXRD測定結果を統合して解析するプログラムを応用し、ZnO-B2O3系ガラス及びZnO-GeO2系ガラス中の空隙分布を推定した。その結果、GeO2系ガラスの方が空隙サイズが小さいことを明らかにした。一般に、濃度消光は発光イオン間距離が近接する際に生じると言われている。したがって、GeO2系ガラスは希土類イオンが比較的分散して存在すると予想され、これは、GeO2系の方が濃度消光が生じ難いことと対応している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、希土類イオン周辺局所構造とガラス母体構造を統合解釈して、希土類イオン周辺の立体構造を推定し、発光特性との間にどのような相関関係が存在するか見出すことを目的にしている。 平成28年度は、平成27年度に引き続き、希土類イオン、修飾酸化物、ガラス形成酸化物を変化させた試料の作製と発光特性の測定をおこなった。また、試料の発光特性の測定だけでなく、ラマン散乱測定やFTIR測定等も実施し、ガラス母体構造に起因するデータの蓄積もおこなっている。 また、昨年度作成した、立体構造を推定するためのプログラムを用い、実試料に対して、EXAFS解析結果とXRD解析結果を統合解析できることを明らかにした。これにより、EXAFS測定やXRD測定後、順次、統合解析をおこなうことができるようになった。また、本プログラムを応用することによって、ガラス母体構造の空隙分布を調査できるようになった。 このように、本年度は、試料作製と試料評価、実試料に対して作成したプログラムが実行可能であることがわかった。今後の研究を進めることによって、データの蓄積が期待できる。したがって、本研究は概ね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、組成を系統的に変化させたガラスの作製を継続して、発光特性評価やガラス母体の評価をおこなう。特に、最終年度であるため、十分系統的な変化ができているように試料作成をおこなう。また、これまでに作製したサンプル及び今後作製するサンプルについて、EXAFS測定及びXRD測定をおこなう。これらの実験により、多くのガラス蛍光体のデータを収集する。 そして、各試料に対して、EXAFS測定の解析結果とXRD測定の解析結果を統合解釈し、立体構造モデルを作成する。そして、希土類イオン周辺の立体構造を明らかにし、希土類イオンがガラス母体構造中のどのような位置に存在しているのか検討する。また、ガラス母体の空隙分布評価もおこないたい。 このようにして得られた実験及び解析結果から、発光特性と強い相関関係を有する特徴的な希土類イオン周辺の立体構造を見出す。
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Research Products
(5 results)