2016 Fiscal Year Research-status Report
水蒸気腐食性を有効に防止できるハフニア共晶系耐環境皮膜の創製プロセス
Project/Area Number |
15K06442
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
上野 俊吉 日本大学, 工学部, 准教授 (60339801)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 耐環境皮膜 / 共晶皮膜 / Al2O3-HfO2共晶 / 凝固 |
Outline of Annual Research Achievements |
集光加熱法により、Al2O3-HfO2共晶構造を有する皮膜をSiC基材上に製膜することが可能となった。共晶構造とSiC基材との間には中間層が形成され、この中間層はSiC基材側がHfC相、共晶構造相側がHfO2となる傾斜機能層となっていることが分かった。成膜速度を変化させた実験から、この中間層の形成メカニズムを明らかにした。 一方で、HfO2の代わりにZrO2を用いた成膜実験も行った。この場合、中間層のトップと共晶構造相の間で亀裂が生じ、良好な皮膜を作成することができなかった。その原因が、ZrO2とSiCとの超高温域における反応性に起因することを実験的に求めた。HfO2を用いる場合とZrO2を用いる場合とでの、SiC基材との反応性の違いをまとめた。これらの結果は、下記6報の論文としてまとめるとともに、12件の学会発表で公表した。 (1) Microstructure Formation of Al2O3-HfO2 Eutectic、K. Seya, B-K Jang and S. Ueno、Journal of the Ceramic Society of Japan, 123[5], 433-436 (2015). (2) An Oxide Eutectic EBC for Silicon Carbide Ceramics、K. Seya, S. Ueno and B-K Jang、Journal of Nanomaterials, vol.2015, Article ID 318278 (2015).他、4件
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
およそ期待通りの実験結果が得られた。共晶構造を有する皮膜は、集光加熱の手法を用いると、再現よく製膜することができるため、溶融体の移動速度を変化させる実験を行うことができ、中間層の形成メカニズムを解明することができたとともに、中間層の形成が皮膜の健全性を保証することを、Al2O3-ZrO2共晶の成膜実験と比較して明らかにすることができた。また、集光加熱のような急速加熱・急冷凝固が必要であることを示す目的で、さらに超高速加熱と超急冷条件を得ることができる、レーザを用いた実験を検討している。 当初目標とした、成膜技術の確立を目指し、最終年度では、大型部品への成膜実験まで試みることができる見通しとなってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の研究において、Al2O3-HfO2共晶構造を有する耐環境皮膜層の成膜が、集光加熱による一方向凝固により可能であることを明らかにした。最終年度では、大型部品への成膜実験まで試みることができる見通しとなってきている。 しかし、本研究を進めるにおいて、共晶構造相を有する皮膜の実用化に際しては、以下の点が大きな問題になることが学会などでも明らかになってきている。 (1)HfO2相は酸素透過能が高いため、基材の酸化を抑制するのが難しい。(2)集光加熱法を用いたプロセスでは、実用化の大型部材に製膜することが難しい。(3)短い時間とはいえ、SiC基材が超高温にさらされるため、SiC基材の劣化が懸念される。 研究代表者は、これらの問題に対し、耐水蒸気腐食性に優れる酸化物共晶系を選択し、基材の熱履歴がかからないような成膜プロセスを、いくつか考案し、実験研究を積み重ねている。
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