2015 Fiscal Year Research-status Report
ホスト励起を利用したf-f発光型酸化物蛍光体の元素制御に基づく物質探索と発光評価
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15K06445
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
佐藤 泰史 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (90383504)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 機能性セラミックス材料 / 蛍光体 / ペロブスカイト / ダブルペロブスカイト / バンドギャップエンジニアリング |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、カチオン制御による母相のバンドギャップエネルギー(Eg)と発光イオンであるPr3+の励起エネルギー(Eex)との関係を中心に検討した。(1)CaTiO3:Pr3+のEgとEexがCaSnO3:Pr3+に比べて低エネルギー側である事に着目し、溶液法を用いた両試料の高品質化を検討した。まず既往の水溶性Ti錯体に加えて水溶性Sn錯体を出発原料として新規に開発し、精密な組成制御を可能にした。その上でTiまたはSnの仕込み量と発光特性の関係を検討したところ、化学量論比に対して数%程度多めに添加した試料の発光特性が大幅に向上した。これは、原料溶液中のTiやSnは加熱攪拌により飛散・減少し、最終生成物内に微量のカチオン欠損が生じる事で、カチオン欠損が母相からPr3+へのエネルギー移動を抑制し、最終的に発光の低減をつながったと考えている。これに対して、予めTiやSnを多めに添加した場合、結晶内でのカチオン欠損は抑制され、母相からPr3+へのエネルギー移動が効率的に生じる事が予想される。(2)Ca(Sc0.5-xInxSb0.5)O3:Pr3+を用いて、Bサイト内のIn量(x)を増加させる事でEgとEexは低エネルギー側へシフトし、当初予想したEgとPr3+のEexとの関係を確認する事できた。加えて、Bサイト内のIn比をx=0.2-0.3にする事で、Pr3+から発光が著しく向上する事も確認した。(3)La1/3MO3:Pr3+(M: Nb, Ta)は、Nb系のEgとEexがTa系に比べてそれぞれ低エネルギー側である事が報告されているが、固相反応法で作製した試料の発光特性はいずれも低く、両者の関係を正確に評価する事は困難だった。そこで、溶液法を用いて両試料を作製したところ、比較的強い発光を示す試料が作製でき、両試料におけるEgとPr3+のEexの関係を正確に評価する事ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度初めの予備実験において、ペロブスカイト酸化物蛍光体の発光特性が作製条件により大幅に低下する事が明らかになり、特に本来であれば高純度試料の合成が期待できる溶液法において、その傾向が強く現れた。そこで今年度は、まずこの原因を突き止める事を中心に研究に取り組んだ。その結果、母相の僅かな組成のズレが発光低下に大きく関係している事がわかり、仕込み組成の段階で適切な組成が重要である事を認識すると共にいくつかの対策を立てる事ができた。これにより、試料合成に関係した大きな問題は概ね解決できたと考えている。なお、ダブルペロブスカイト型蛍光体における候補物質の選定は当初の計画より若干遅れているが、前述の合成法の確立に加えて、酸窒化物での検討も前倒しで進めている事から、研究全体としては概ね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
Pr3+を賦活したCaTaO2N-CaZrO3固溶体は、TaとZrの比を調整する事で系内のO/N比を制御でき、結果としてEgやEexの制御も期待できる。来年度は、まずTaNを原料に用いたCaTaO2N相の高純度試料合成と共に、CaZrO3との固溶化、さらに近紫外励起によるPr3+の励起の可能性を検討する。今年度の予備実験では、1400℃での焼成において、N2流量を系統的に減少させていくと試料内に含まれるCaTaO2N相の比が増加する事がわかっている。このことから、焼成時のN2/O2比を精密制御する事で、CaTaO2N相の最適な生成条件を把握する。さらに、アンモニア流通下における酸化物前駆体の窒化による試料合成も併せて検討する。また、カチオン組成によるEgとEexの制御についても今年度得られた知見に基づき、CaTiO3-CaSnO3系やCa系ダブルペロブスカイト固溶体などでの検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
消耗品ならびに薬品等などの購入金額が当初予想していた金額よりも若干安くなった事が原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該の金額で購入可能な消耗品に使用する予定である。
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