2016 Fiscal Year Research-status Report
CMCの超高温環境下での損傷挙動を把握する光ファイバAEセンサシステム
Project/Area Number |
15K06457
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡部 洋二 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (90313006)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光ファイバセンサ / 高温環境 / AE計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
CMC材料は耐熱軽量構造部材への適用が期待されているが、そのためには高温環境下での損傷挙動を把握する必要がある。そこで本研究では、位相シフトFBG(PSFBG)を用いた光ファイバAEセンサシステムにより、複合材料の高温下での損傷進展挙動を把握可能にすることを目的とする。 本年度は、光ファイバAEセンサを高温環境で使用可能にするための改良を試みた。一般のFBGは光ファイバに形成された周期的な屈折率変動であり、900度程度まで加熱すると消失してしまう。しかし近年では、FBGを1000度近くまで加熱保持するアニーリング処理を施すと、一度消失したFBGが再生し、その後再び900度まで加熱しても消失しない再生現象が生じることが知られている。そこで、PSFBGセンサに対してアニーリング処理を施したところ、再生現象を確認することができた。ただし、スペクトル形状が緩やかになっており、AEを計測するには感度が不足していた。しかし一般のFBGセンサを再生させたものよりは感度が優れており、能動的に発振させた超音波を1000度の高温下で計測することができた。 そこで次に、高温環境でもAE信号を計測可能にするため、IHIとの共同研究により構築した、光ファイバ自身をウェーブガイドに使用することでPSFBGセンサ自体を高温環境から離して計測する遠隔計測法を、導入した。その結果、光ファイバセンサ独自の特性により、正確なAE波形を遠隔で計測することを可能にした。そして実際に、1000度の環境でも模擬AE信号を計測することに成功した。 さらに本システムでは、光ファイバを計測対象に接着するため、接着部の特性や形状が計測結果に及ぼす影響を明らかにする必要がある。そこで、接着部の材料特性と大きさを変えながら有限要素解析を実施したところ、それらは受信波形にほとんど影響を与えないことも確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、2年目は、高温環境での計測に適した光ファイバセンサの改良として、(1) PSFBGのアニーリング処理、(2) 光ファイバ自身の耐熱性向上、(3) 耐熱性に優れた光ファイバの設置方法、の3点を達成目標としていた。(1)については、PSFBGについてもアニーリング処理による再生PSFBGを形成することに成功した。ただし、その感度は低下しており、AE波形の計測は困難であったが、能動的に発振させた超音波は十分に計測可能であった。次に(2)については、光ファイバ自身に優れた耐熱性を持たすことはできなかったが、その代替手段としての遠隔AE計測法を導入することで対応可能にした。そして(3)については、光ファイバを試験片に接着した場合、接着部の材料特性や形状は計測AE波形にほとんど影響を及ぼさないことが確認できたので、高温に耐えられる均質なものであれば、どのようなタイプの接着剤でも本計測に適用できることがわかった。以上より、当初の計画での目標は、部分的に異なる代替手段を用いることで、おおむね達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の最終目標としていた、CMC複合材料の超高温環境下での損傷挙動評価を、すぐに実施することが困難となってきている。その理由として、一つは現状のシステムが、石英ガラス製の光ファイバが溶融しない温度範囲で適用可能であること、もう一つは、材料入手の面からCMC材料を直接対象とすることが困難であること、の2点が挙げられる。よって、次年度は、1000度以下の高温環境で使用される構造材料(例えば熱可塑性CFRPやセラミックスコーティング材料など)を対象として、そのAE計測と損傷形態の推定を実施していく。その一方で、システム自体の改善も引き続き進める。具体的には、光ファイバをウェーブガイドとして用いた場合、密閉された環境槽で実験を行うことが難しくなるため、PSFBGセンサ部そのものを試験片付近に配置できることが、より望ましい。今年度にアニーリング処理で形成した再生PSFBGでは、超音波計測は可能であるが、AE信号を計測できるまでの感度には達しなかった。そこで次年度は、元々のPSFBGの設計パラメータから検討することで、再生PSFBGの感度を向上させ、AE波形を計測できるレベルまで感度の向上を試みる。
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