2016 Fiscal Year Research-status Report
生物のナノヘア構造に学ぶ把持・脱離機構の破壊クライテリオン
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15K06458
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高橋 邦夫 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (70226827)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ヘムタビー パソムポーン 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (00401539)
齋藤 滋規 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (30313349)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 凝着 / PDMS / 生物模倣 / 梁構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱力学的に厳密に可逆な接合プロセスへ役立てるため,ヤモリや虫等,自然界の生物が用いる,多毛構造による把持と脱離機構を物理的に明らかにする.毛構造をモデル化し理論的な検討を行うとともに,実験による検討を行っている.昨年度までの研究では,水平方向の力が把持力に及ぼす影響を理論と実験により検討し,我々の提案した理論で.実験結果の傾向を定性的に予測できることが分かったが,定量的な予測には至っていなかった.今年度は,その原因を解明するためのモデルの改良と多毛構造を実現するための多毛構造作成手法の改良に着手した. モデルの改良に関しては,ヒステリシス(エネルギー散逸)の影響とモデルで考慮されているエネルギーの分配に関して検討を行った.ヒステリシスのメカニズムとして接触線の最大値に比例するエネルギーが凝着プロセスを通して散逸されている可能性が示唆されたが,影響を定量的に見積もるまでは至っておらず引き続き検討が必要であることが分かった.エネルギー分配に関しては,梁モデルの軸方向の伸びと梁のせん断変形を考慮したモデルの改良を行ったが,この2つだけでは,はやり実験結果と理論との差を定量的に説明するには至らず,大変形の影響を調査してみる必要があることが示唆されている.多毛構造の作成手法の改良としては,櫛構造の積層による方法を提案した.金属板にエッチングで櫛構造を作成しそれをガラス板で挟んだ鋳型を真空容器中に設置し,PDMSを流し込むことで,櫛構造が作れることを示すことができた.今後はこれを積層して最終的な多毛構造とすることとしている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理論で予測された把持力(最大凝着力)の水平力依存性を定性的に説明できているので,おおむね順調ともいえるが,定量的には見積もれていない点に注目して,その原因の検討と,理論(モデル)の改良に時間を取っているため,若干遅れているといえる.定性的に説明つけられていることに甘んじて結果を急ぐあまり,科学的な視点を見失う可能性もあるので,理論的な検討にこだわった結果である.
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Strategy for Future Research Activity |
理論的な検討により,容易に取り入れられるメカニズムは取り入れてみたが,それらのみでは問題を解決できないことが分かってきた.これ以上定量性の追求に力を割くよりも,定性的に説明できており,その原因もある程度しぼられていることに満足し,多毛構造の作成手法の確立に重心を徐々にうつすことにしている.
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