2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K06473
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
中村 照美 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 材料創製・ステーション加工, ステーション長 (20354277)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | MIG溶接 / 溶融金属液柱 / 純Arシールドガス / ファイバーレーザ / 切断 |
Outline of Annual Research Achievements |
純Arシールドガスを使用したMIGアーク中ではワイヤ先端に溶融した金属が連なり長く伸びた液柱を形成する。この液柱はアーク内で不安定に動き回り不規則な短絡が発生して溶接を不安定にする。このため、純Arシールドガスを使用したMIG 溶接では溶融金属の液柱を短くしなければ、安定な溶接を行うことができない。 本研究ではMIGアーク中でレーザ光を溶融金属液柱に照射し、非接触で溶融金属の液柱を切断するためのレーザ照射条件を実験により求める。本年はレーザ切断に対するワイヤ材質の影響とレーザ照射位置を調査した。市販の鋼ワイヤ、ステンレスワイヤ、Ni合金ワイヤの3種類の直径1.2mmワイヤを使用した。アーク溶接中にワイヤ先端に生じた液柱を安定に切断するため、レーザパワー、レーザのパルス条件を固定し、各種材料に対するレーザの照射位置を求めた。鋼ワイヤ、ステンレスワイヤ、Ni合金ワイヤでは長く伸びた液柱が生じ、液柱下部(径0.5-0.6mm)にレーザを照射するとレーザの反兆力により液柱が曲がり安定に切断することができなかった。これより細い部分(板に近い下端部)では液中が不安定に動き回り、液中にレーザを命中させることが困難であった。ワイヤ先端に生じる液柱は直径が1.2mmより狭くなった部分であり、固体部分はワイヤ径が1.2mmの部分であると予想される。そこで、径が0.8-1.0mm付近では中心部に固体部が存在し液柱の動きがほとんど無いことがわかった。この部分を照射したところ、レーザの命中率もあがり、レーザの反兆力に影響されることなく安定に切断できるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MIGアーク内で溶融金属の液柱を切断できる条件を求めることができた。アーク内で切断状況の観察を行うことができように高速ビデオカメラを使用した実験装置を構成し、10000コマ/sで撮影することが可能になった。さらに、レーザ照明装置と、高速度カメラの撮影速度に同期して溶接電流、電圧、レーザ信号の計測が可能となる装置とインターフェイスを導入した。レーザ照射と同期して照明しながら撮影できるシステムにより、レーザの照射位置を明瞭に観察でき、レーザ照射位置の最適化のための検討が可能となった。さらに、高速度カメラと同期した溶接条件・レーザパルス条件の計測システムにより、レーザ照射時の溶融金属液柱の切断時の挙動と溶接条件の関係を求めることができた。これらの方法を鋼ワイヤ、ステンレスワイヤ、Ni合金ワイヤに適用し、各ワイヤについて適正な切断位置と用湯金属の切断挙動の解析が可能になった。 レーザの反兆力により溶融金属の液柱が曲がることを抑えるために、レーザの照射方向を2系統にして、互いに反対方向からレーザを照射するためのシステムの設計(レーザ分岐システム、レーザヘッドシステム、2つのレーザヘットを保持し、溶接トーチに取り付けるための装置)を行った。 溶接ワイヤと溶融金属液柱の粘性を調べて最適な切断位置を調べるためには、ワイヤと溶融金属液中の温度分布を求めることが必要である。そこで温度分布をもとめるためのた数値解析を行う準備をおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
溶融金属の液柱を精度良く安定に切断除去するために、パルス電流とレーザ照射を同期させた安定な切断方法を検討する。そのために、レーザ発信器から出るレーザ照射信号と溶接電源特性を同期させるインターフェスを試作し、その有効性を確認する。これにより安定な切断条件を求める。 ワイヤと液柱の温度分布を数値解析で求め、固相部の比率を推定する。この比率とワイヤ照射位置の関係を解析して、安定に切断できる位置を求める。これを、鋼ワイヤ、ステンレスワイヤ、Ni合金ワイヤについて求め、材料(融点)の影響を検討する。 液中が生じないAl合金、液中があまり長くならない銅合金についてもレーザ照射システムにより安定に切断が可能かどうかを確かめ、材料毎のレーザ照射条件(切断条件)をまとめ、融点の影響と液柱の影響を検討する。 大電流条件下でのローテイティング移行について、レーザを固体部(なるべく液中の近くし、位置が大きく変動しない所)に照射し、本システムによりワイヤの安定な切断が可能で、溶接の安定化に効果があることを実験的に検証する。 レーザを溶融金属の液柱に一方向から当てただけではレーザの反兆力により溶融金属の液柱が曲がることが明らかになった。そこでこれを抑えるために、レーザの照射方向を二系統にして、互いに反対方向からレーザを照射できるシステムを構成する。二系統から照射したレーザによる切断試験を行う。これを鋼ワイヤ、ステンレスワイヤ、Ni合金ワイヤに適用し、有効性を検証する。
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