2015 Fiscal Year Research-status Report
骨形成促進作用を有する次世代型生体活性チタン金属の開発
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15K06482
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤林 俊介 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 特定教授 (30362502)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | チタン金属 / ストロンチウムイオン / マグネシウムイオン / 骨形成促進 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨粗鬆症は高齢社会とともに増加してきているが、金属製インプラントを脆弱な骨に固着させるためにはインプラント側のみならず、脆弱な骨を改変する必要がある。そのために骨形成促進作用を有する金属イオンを放出する新規生体活性チタン材料の開発を目指している。我々はチタン金属表面の様々な処理方法を開発してきた。アルカリ加熱処理は水酸化ナトリウムを用いた化学処理および熱処理により純チタンおよびチタン合金に生体活性能(骨伝導能:骨と結合する能力)を付与する技術であり、すでにセメントレス人工股関節として臨床応用され、良好な臨床成績が得られている。また、多孔体チタンへの応用では骨伝導能のみならず骨誘導能(骨を形成する能力)を見出し、その成果を脊椎固定術において臨床応用した。さらに骨伝導能を向上させ、安定した処理層を得るためのカルシウム(Ca)処理を開発し、その安全性と有効性を評価した。ただ、従来の生体活性チタンが有する骨伝導能、骨誘導能は受動的な機能であり、脆弱な骨に対する金属製インプラント手術の成績向上のためにはインプラントに能動的な機能の付与が必要である。近年、マグネシウム(Mg)イオンやストロンチウム(Sr)イオン骨形成に対する有効性が報告され、注目を集めている。骨形成を促進するMgイオンあるいはSrイオンをチタンインプラント表面の処理層に同時に導入し、これらのイオンを擬似生体環境下で徐放させること、in vitroの研究においてアパタイト形成能があり、金属イオンの至適濃度を明らかにした。本研究ではMgイオンおよびSrイオンを導入したCa処理チタンの生体内での評価を行い、その安全性と有効性を評価し、バイオ機能を有する新規金属製生体活性材料の開発を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MgイオンあるいはSrイオンを導入したインプラントの動物(家兎)への埋植は終了し、徐放するイオンの血中濃度測定、骨とインプラントとの固着の程度を測る力学試験、ならびに組織学的調査を行った。力学試験、組織学的調査では当初の想定通りMgあるいはSrイオンを導入したインプラントが良好な成績であった。また、骨中イオン濃度ではインプラントに近傍の骨ではSrイオンを検出し、インプラントから離れた部分の骨では検出しなかった。インプラント周囲の骨のみに作用している可能性が高く、理想的な状況である。血中イオンは術後4週でやや低く、術後16週でやや高い結果であったが、総じて大きな変化はなく、有害な濃度には全く達していなかった。 マウスの骨芽系細胞株を用いてインプラント表面での細胞培養も開始しており、細胞活性評価に置いてはMgあるいはSrイオンを導入したインプラントが良好な結果であり、イオンなどによる明らかな毒性は認めていない。遺伝子発現では骨芽細胞の分化マーカーとなる遺伝子群においてMgあるいはSrイオンを導入したインプラントが概ね良好な結果を得ている。また、様々な濃度のMgイオンあるいはSrイオンを付加した培地における細胞の遺伝子発現も調査しており、骨芽細胞の分化に適度なおおよそのイオンの濃度も同定してきている。 以上から概ね当初の計画通り進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの結果では今回開発したインプラントはin vivo、in vitroともに概ね良好な結果を得ている。In vitroの実験では遺伝子発現は概ね良好であったが、骨芽細胞の分化の目安としての石灰化能の程度も評価が必要である。また、今回の結果をもたらした細胞内外のメカニズムの解明をin vitroで行っていく。骨形成において重要な細胞内伝達シグナル分子やイオン受容体などが活性化しているかどうかを細胞内あるいは核内タンパク分析、免疫染色などを行って評価していく予定である。 また、徐放されたイオンのみが細胞に働いて今回の結果をもたらしているのか、あるいはインプラント表面に含まれるMgイオンあるいはSrイオンが細胞に効果をもたらすのかなど今回開発したインプラントのどの要素がよい結果につながったのかを解明し、今後のインプラント開発の改善点などを明らかにしたいと考えている。
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