2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K06491
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
有吉 欽吾 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80381979)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸田 逸平 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 助教 (30419676)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | リチウムイオン蓄電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、仮想的な材料も含んだ種々の電池材料について電極電位の計算を行うとともに、実験により得られた電極電位との比較・検討を行うことで、電池材料の固体化学と電極電位との関係性、とくに結晶構造と関係する遷移金属イオンならびにリチウムイオンの局所配位環境と電極電位との関係について考察した。 1.計算からのアプローチとして、誤差の取り扱いをまとめ、大阪市立大学紀要にて出版した。同一化学組成でありながら異なる3種類の結晶構造(層構造、スピネル型構造、ルチル型構造)について、リチウム含有量の異なる状態におけるエネルギー計算を行うことで、電池材料の電極電位と結晶構造との関係性について検討した。得られた結果からは、結晶構造の因子としてルチル型構造が広い組成範囲で電極電位の変化が少ないこと、スピネル構造が高電圧側に働くものの高Li組成側での電圧低下が大きくなることが分かった。いずれの構造でも元素ごとの定性的な傾向はおおむね一致しており、電極電位が構造と元素という因子で分類できるという仮説をおおむね裏付けることができた。これらの成果を日本セラミックス協会2017年年会にてポスター発表した。 2.実験からのアプローチとしては、リチウム過剰組成をもつコバルト・マンガン酸化物についてコバルトとマンガンの比を連続的に変化させた一連の固溶体を合成し、その電極電位について詳細な検討をおこなった。予備検討より、この材料の固相酸化・還元電位が材料の化学組成と一義的に対応せず、従来の電池機能材料とは異なった反応機構で進行することを明らかにした。またこの特異な現象を解析するために新たな電気化学測定法を考案し、可逆電極電位、電気化学分極、および反応抵抗などの電位論構築に資する多くのパラメータを算出した。これらの成果を電池討論会および電気化学会にて口頭発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(計算グループ)平成28年度において、電池材料の計算を行うための基盤整備として、計算機部品を購入して従来資産である計算機クラスターを増強した。これにより本課題の遂行に最低限必要な計算環境を整えた。計算機を効率的に運用するためのソフトウェアを導入し、計算支援用プログラムを開発した。仮想的な電池材料としてスピネル型構造および層構造をもつリチウム含有遷移金属酸化物(遷移金属元素として、3d遷移金属元素であるクロムから銅までの元素を対象)について、初期状態および反応後の物質のエネルギーを計算し、そこからそれぞれの材料における理論電位を評価した。また一部の材料については、反応途中の材料についてもエネルギー計算を行うことで、材料の組成変動にともなう電位の変化、つまり電位曲線の可視化を検討した。 (実験グループ)本年度では、リチウム・コバルト・マンガン酸化物(LiCoO2とLi2MnO3の固溶体)について詳細な電気化学測定を行った。開回路電圧測定ならびに分極測定の結果から、この材料においては化学組成と可逆電極電位が一義的な対応関係をもたないことを明らかにするとともに、この材料の固相酸化・還元反応が従来に電池機能材料とは全く異なる反応機構で進行することがわかった。さらに新たに考案した充放電測定法によりこの反応機構について電位論の観点から検討した。
|
Strategy for Future Research Activity |
(計算グループ)これまでに検討したスピネル型構造・層構造・ルチル型構造をもつリチウム含有遷移金属酸化物について、Li組成をより細かく分割し、二相反応などの反応の様式を精査する。それぞれの結晶について電子密度を得て、これから価数変化などについ>てより細やかな情報を得る。計算対象となる固相酸化・還元イオンについても、これまでの3d遷移金属元素に加えて、4dならびに5d遷移金属元素についても検討を行い、元素の族・周期に関する傾向について考察を加える。電極電位の定性的な評価から定量的>な評価へと議論を深め、材料開発に有用な情報をまとめる。 (実験グループ)平成29年度では、これまで材料化に成功したリチウム・コバルト・マンガン酸化物を中心に、種々の電池材料の精密な電位計測を行う。特に計算グループにより電池に関する知見が得られた材料系に対して、その結果の妥当性を実験敵アプローチにより検証することを重視した検討をを行う。
|
Causes of Carryover |
平成28年度で計画していた精密電位計測用電気化学測定装置について、本来購入予定であった装置では精度不足であることが判明したため、新たに回路設計からはじめて本研究目的にかなう充放電装置の自作を行った。そのため、本年度では系統的な検討に必要な装置の数を調達するには至らず、次年度使用学が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度では、電池材料の電位計算に必要な計算資源の拡充と、種々の電池材料に関する合成の検討ならびに電位計測に必要な電気化学セルの購入ならびに電位計測システムの構築を行う。
|