2016 Fiscal Year Research-status Report
エアロゾルデポジッション法による常温での高配向セラミックスコーティングの創生
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15K06501
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
長谷川 誠 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (50376513)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エアロゾルデポジション / 集合組織 / 結晶配向 / 塑性変形 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は製膜および熱処理を前年度に引き続き継続しつつ、各粒子の活動すべり系から、高速変形(すべり変形+双晶変形)のみ、およびへき開破壊をも仮定した場合(α-Al2O3のみ)の集合組織形成について検討した。 ①膜のAD法による作製および熱処理:前年度に実施している試料作製および評価を行った。AD法にて、α-Al2O3およびNi合金粉末を対象にモリブデン基材へコーティングを実施した。キャリアガスには、N2およびヘリウムを用いた。また、粉末衝突角度を90度および60度とした。本年度は、α-Al2O3については粉末巻上げ流量および粉末搬送流量の合計流量を40L/minまで引き上げ、形成される集合組織が変化する可能性について検討した。膜厚は1μm程度とした。膜厚は精密段差測定器による評価した。製膜後の熱処理は900℃~1300℃とし、300時間まで行い、組織および集合組織変化をFE-SEMおよびXRDにより調べた。 ②ザックスモデル(シュミット因子とCRSSを用いての集合組織形成の検討):α-Al2O3の粒子において、シュミット因子による活動すべり系およびCRSSによって活動すべり系を決定して、集合組織の形成について検討を行った。 ③テイラーモデルに基づいた塑性変形とへき開破壊を考慮した集合組織形成の検討:すべり系が{111}<011>のみであるfccのNi合金についてすべり変形が活動した場合について、結晶粒の変形の連続性を満たすモデル(テイラーモデル)を用いて集合組織の形成について検討した。α-Al2O3の活動すべり系から、すべり変形のみ、あるいはすべり変形と双晶変形の両方が活動した場合について、同様に集合組織の形成について検討した。また、へき開破壊をも考慮した集合組織形成を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
α-Al2O3粉末を用いての評価を粉末巻上げ流量および粉末搬送流量の合計流量を増やした状態で実施した。ノズル角度が90°の場合、これまでは(0001)面が板面に対して15°程度傾いた繊維集合組織であったが、合計流量が30L/minを超えたあたりで(0001)面が板面に平行となった。ノズル角度が60°の場合は、流量が20L/minを超えたあたりで(0001)面が板面に、それ以降、流量の増加にともなってCRSS活動度が変化したかあるいは双晶が活動したかについてはわからないものの集合組織が変化することを新たに見出した。(0001)面が板面に対して15°程度傾いた繊維集合組織となる理由については、シュミット因子と室温におけるCRSSによるいわゆるザックスモデルによって説明が付くこと、また、(0001)面が板面に平行な繊維集合組織となるのは、格子回転がオーバーシュートすることによると考えられる。コーティングを熱処理することによって(0001)面が板面と平行になる繊維集合組織が形成されるが、その後、2重、3重繊維集合組織となることを見出した。Ni粒子については、ナノオーダーの粒子については、膜というよりは、凝集体の膜となっており、1μm以上の粒子出なければAD法により製膜できないことが明らかとなった。 テイラーモデルに基づいた説明は、多結晶体の変形ではないため、ザックスモデルと大きな違い、優位性は無いようである。ただ、双晶系の活動については今後も詳細な解析が必要であり、この活動をザックスモデルに取り込んで解析を進めていくことを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
①EBSDを用いた個々の結晶粒における結晶方位分布:結晶粒中の結晶方位を電子線後方散乱(EBSD)パターンにより取得し、個々の結晶粒の結晶方位および結晶方位分散の情報を得る。マッピングにより隣り合う結晶粒の大きさや形状、結晶方位、結晶方位分散の状況から、熱処理に伴う結晶粒成長とその結晶粒の方位との関係について検討する。 ②EBSDを用いた個々の結晶粒におけるひずみ成分の評価:結晶粒中の局所的なひずみをEBSDパターンの「ゆがみ」により実験的に求める手法により同定する。この手法から熱処理による結晶粒の粒成長能力を推定し、変形と粒成長による集合組織形成を調べる。 ③結果のまとめ:AD製膜およびその後の熱処理によって形成した膜の集合組織について、局所的な高温、高速変形とその後の熱処理による結晶粒成長として、トータルに集合組織の形成機構について明らかにしていく。変形については、基本的にザックスモデルを用いて集合組織の解析を検討していく。その上で、従来の一般的な集合組織形成に関する知見との相違を明らかにする。
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