2016 Fiscal Year Research-status Report
汎用型高強度チタン合金焼結材のナノ・原子レベル組織設計に基づく高機能化
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15K06502
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
本間 智之 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (50452082)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Ti合金 / 時効析出 / 透過型電子顕微鏡 / 後方散乱電子回折 / 強度 |
Outline of Annual Research Achievements |
汎用型Ti-Fe-Zr合金焼結材の創製を目指し、メカニカルアロイング(MA)やパルス通電焼結法(PECS)を用いたプロセス制御を試みた。MAプロセスはコストが上昇するため、これを粉末のブレンディング(混合)に変更し、900℃、1hのβ化処理により均一なβ相が得られることを確認した。ニアネットシャイプ成形を想定したプロセスコストの低減を目的に得られた粉末をPECSを用いて焼結した。この結果、ingot breakdownを省略し、コスト削減に成功している。焼結後溶体化処理を行ったβ粒の組織観察を後方散乱電子回折を用いて行ったところ、予想に反し、Zr添加合金の平均結晶粒径が、Zr無添加合金よりも大きくなることがわかった。この原因として、ZrがOとの融和性が高いために粉末焼結を行う時点でZrがTiやFeの酸化膜からOを還元し、その結果焼結直後の粉末間の体拡散が助長され、結果的に粒界に残留するポアが減少することで粒成長が促進されると考えられる。 時効温度は400、500、640℃の3条件で行い、どの時効温度域でもZrを添加したTi-5Fe-5Zr合金の硬さがZr無添加のTi-5Fe合金よりも優れることを明らかにした。640℃の時効条件において、両合金ともピーク時効はω相により強化され、わずか数分の間にα相へと変態し、Zr添加は予想通りソリュートドラッグ効果により粒成長が抑制され、結果的に高温時効の過時効領域でも硬さが低下しないことが明らかとなった。ピーク時効時に生成するω相はisothermalω相であり、焼入れ直後にもすでにathermalω相が生成し、これが640℃の時効により成長することでピーク硬さに寄与することを明らかにしている。Feはβ相の安定化に寄与し、α相の核生成直後にわずかにα相中にも偏析することが確認され、時効時間の上昇とともに数at.%の濃度まで低下し、その多くがβ相に分配することがエネルギー分散型X線分光分析により明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TiH2を用いた実験も進みつつあり、試験片の大きさに問題が見られたPECS焼結でも、引張試験の測定が可能となる算段がついている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は400および500℃時効材の微細組織観察を行い、温度の違いによる組織変化を理解する。また、φ50の比較的大きいダイとパンチを用いて焼結を行うことで、大きな焼結材を得、それを放電加工機により薄板の試験片を作製し、H28年度に導入した伸び計を用いることで引張試験を行う。引張試験は焼結まま材、溶体化まま材、640℃のピーク時効材、過時効材の4条件で行い、これをZr添加の有無に依らず測定し、引張特性を理解する。また、比較材にTi-6Al-4V合金を用い、Ti-5Fe-5Zr合金の特性と比較する。必要に応じて圧縮試験片も作製し、耐力の異方性の評価も合わせて行う。
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Causes of Carryover |
MA処理を省略したことにより、消耗品を節約することができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
焼結試料の大型化により、用いる粉末量が増えるため、粉末の購入費等の消耗品費に充てる。
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