2016 Fiscal Year Research-status Report
溶融塩電解を用いたFe-Al系低次元熱電変換デバイスの新規作製プロセス
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15K06525
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
山本 宏明 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (40326301)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 溶融塩電解 / 鉄-アルミニウム合金 / 熱電変換材料 / 電解作製 / 合金薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄(Fe)とアルミニウム(Al)から構成されるFe-Al系熱電変換材料は,組成によって熱電変換特性が変化することから,電析物の組成制御が重要である.本研究では,電析物の組成制御を容易にする手段として,AlCl3-NaCl-KCl-FeCl2溶融塩への多価アルコール(エチレングリコール(EG),グリセリン(G))の添加を検討した.共晶組成近傍の64.0 mol%AlCl3-26.0 mol%NaCl-10.0 mol%KCl 溶融塩に,FeCl2 を,AlCl3とFeCl2のモル比が40:1~200:1となるよう添加した.これに,EGまたはGを0~5.96mol%添加して,100 Am-2における定電流電解によりFe-Al合金電析を試みた. Fe-Al合金中のAl含有量は,EGおよびGを添加することで,これらが無添加の場合と比較して増加することが明らかとなった.特にEGの添加は,Al含有量を増加させる効果が大きいことが分かった.EG添加量の増加に伴い,Al含有量は増加したが,EGを5.96 mol%以上添加すると溶融塩が凝固するため,電解が実施できなくなった.このことから,EG添加によってFe-Al合金中のAlが増加する効果は,EG添加量が4.84 mol%のときに最適であることが分かった. EG添加量を4.84 mol%とした場合,溶融塩中のAlCl3/FeCl2モル比を40~200に制御することで2.6~88.0 mol%のAlを含有するFe-Al合金が得られることが明らかとなった.EG無添加の溶融塩ではAlが共析しない溶融塩組成(AlCl3/FeCl2モル比が100以下)であっても,EGを添加することで様々な組成のFe-Al合金が電析できるようになり,Fe-Al合金の組成制御が容易になることが見出された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は,平滑なAl電析が可能なルイス酸性組成である64.0 mol%AlCl3-26.0 mol%NaCl-10.0 mol%KCl を基本溶融塩組成として採用し,鉄イオン源としてFeCl2 を添加することで,Fe-Al合金が可能であることを見出した。また,溶融塩中のAlCl3とFeCl2のモル比(AlCl3/FeCl2モル比)を制御することで100 Am-2の定電流電解により得られるFe-Al合金電析物の組成を制御でき,p型またはn型の熱電変換特性は,Fe-Al合金の組成に依存して変化することを明らかにした.しかしながら,Al含有量が高いFe-Al合金を得るためには,溶融塩中のAlCl3/FeCl2モル比を100以上に制御する(AlCl3とFeCl2の濃度差を大きくする)必要があった. 本年度の研究では,2価のアルコールの一種であるエチレングリコール(EG)の添加剤として用いる検討を行った.EG無添加の場合,AlCl3/FeCl2モル比が100以下の溶融塩で得られた電析物中のAl含有量は0~5 mol%程度であった.これに対し,溶融塩中にEGを4.84 mol%添加すると,AlCl3/FeCl2モル比が100の溶融塩であっても,70 mol%のAlが含有するFe-Al合金を電解作製できることを明らかにした.Fe-Al合金の熱電変換特性(ゼーベック係数)は組成に依存するため,熱電変換デバイスの電解作製を目的とする本研究においては電析物の組成をいかに制御するかが重要な課題である.本年度の研究において明らかとなったEG添加の効果は,Fe-Al合金電析物の組成制御をより容易にする点で重要なことと考える.以上より,本年度に目的とした事項をおおむね達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
熱電変換モジュールは,通常,n型熱電変換材料とp型熱電変換材料を,直列に接続して構成される.本研究で扱うFe-Al系熱電変換材料は,組成によりp型あるいはn型熱電変換特性を示す.そのため,Fe-Al合金を溶融塩電解法により作製することを目的とした本研究では,Fe-Al合金の組成を制御することが重要である.これまでの研究では,溶融塩組成,特にAlCl3/FeCl2モル比を制御することや,添加剤を検討することで得られる電析物の組成を制御する試みを行ってきた.しかしながら,これまでに実施した研究結果を用いる場合,p型熱電変換特性を有するFe-Al合金とn型熱電変換特性を有するFe-Al合金を電解作製するために,それぞれの熱電変換特性が得られるよう最適化した異なる組成の溶融塩を用意しておかなければならない.同一組成の溶融塩を用いて,電解条件を切り替えることでFe-Al合金の組成,および熱電変換特性を制御できる方が効率的であると考る.その方法として定電位電解を検討する.電極反応は電解電位により制御されるため,最適化した溶融塩組成において,電解する電位をかえることでFe-Al合金の組成制御を試みる.
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Causes of Carryover |
本年度の当該助成金の使用にあたっては,必要最低限の物品の購入を計画通り実施した.物品費の内,長期間の保管に適さない薬品については,購入したものが完全に消費される直前に追加の購入を行っている.そのため,年度末において無理な予算執行を避けたため次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の物品購入(試薬,ガスまたは金属試料)の購入の一部にあてる.
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Research Products
(4 results)