2017 Fiscal Year Research-status Report
溶融塩電解を用いたFe-Al系低次元熱電変換デバイスの新規作製プロセス
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15K06525
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
山本 宏明 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (40326301)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 溶融塩電解 / 鉄-アルミニウム合金 / 熱電変換材料 / 電解作製 / 合金薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,AlCl3-NaCl-KCl-FeCl24成分系塩化物溶融塩において定電位電解を行い,電解温度,溶融塩組成,および電解電位を制御してFe-Al合金の電解作製を試みた.64.0 mol%AlCl3-26.0 mol%NaCl-10.0 mol%KCl溶融塩を基本組成溶融塩とし,これにFeCl2を添加してFe-Al合金電析を行った.電解温度は403,413,および423 Kとし, FeCl2とAlCl3のモル比を70:1,100:1,および150:1と変化させ,0.2~-0.2 Vにおいて定電位電解を行った. AlCl3とFeCl2のモル比を100:1とした63.59 mol%AlCl3-25.83 mol%NaCl-9.94 mol%KCl-0.64 mol%FeCl2溶融塩では,電解温度413 および423 Kにおいて電析物のAl含有量は電解電位が卑になるにつれ増加し,-0.2 Vより卑な電位において大きく増加した.電解電位によりAlを5~65 mol%含有するFe-Al合金が得られることが分かった.溶融塩温度が低い403 Kでは,Feの還元電流が大きく減少するため,Fe-Al合金の組成制御は難しいことが分かった. 電解温度413 Kにおいて,AlCl3とFeCl2のモル比を100:1,および150:1とした溶融塩から得られた電析物中のAl含有量は,電位が卑になるにつれ緩やかに増加し,-0.2 Vより卑になると大きく増加した.一方,AlCl3とFeCl2のモル比を70:1とした溶融塩では,電析物中のAlと溶融塩中のFe2+との間で生じる置換反応により良好な電析物が得られなかった.電解温度と電解電位を制御することでFe-Al合金電析物の組成を容易に制御できることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は,64.0 mol%AlCl3-26.0 mol%NaCl-10.0 mol%KCl を基本溶融塩組成として採用し,鉄イオン源としてFeCl2 を添加することで,Fe-Al合金が可能であることを見出した。また,溶融塩中のAlCl3とFeCl2のモル比(AlCl3/FeCl2モル比)を制御することで得られるFe-Al合金電析物の組成を制御できることを明らかにした.しかしながら,Al含有量が高いFe-Al合金を得るためには,溶融塩中のAlCl3/FeCl2モル比を100以上に制御する(AlCl3とFeCl2の濃度差を大きくする)必要があった. 電析物の組成制御を容易にする手段として,平成28年度は,2価のアルコールであるエチレングリコール(EG)を添加剤として用いる検討を行った.溶融塩中にEGを4.84 mol%添加すると,AlCl3/FeCl2モル比が100の溶融塩であっても,70 mol%のAlが含有するFe-Al合金を電解作製できることを明らかにした. 電析物の組成制御を容易にする別の手段として,平成29年度は,Fe-Al合金の定電位電解を実施し,電解温度と電解電位がFe-Al合金組成に与える影響について調べた.電解温度413~423 Kにおいて,AlCl3/FeCl2モル比を100~150の溶融塩において電解電位を-0.2~0.3 Vに制御することでFe-Al合金電析物の組成(Al含有量5~65 mol%)を容易に制御できることが明らかになった.本研究においては電析物の組成をいかに制御するかが重要な課題である.本年度の研究において明らかとなったFe-Al合金作製のための定電位電解条件は,Fe-Al合金電析物の組成制御をより容易にする点で重要なことと考える.以上より,本年度に目的とした事項をおおむね達成できたと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究では,溶融塩温度や溶融塩組成を検討し定電位電解に用いる電解電位を制御することで電析物の組成を容易に制御できるや,得られた電析物はAl含有量が10~25 mol%のFe-Al合金でありn型の熱電変換特性を示すことを明らかにした.また,n型の熱電変換特性を有するFe-Al合金の中で,出力が最大となる組成やその合金を得るための電析条件も明らかにした. 熱電変換モジュールは,通常,n型熱電変換材料とp型熱電変換材料を,直列に接続して構成される.そのため,p型の熱電変換特性を有するFe-Al合金の電解作製が重要となる.これまでの研究や文献などで,p型の熱電変換特性を有するFe-Al合金の組成は,Al含有力が10 mol%以下または25 mol%以上であることが分かっている.そのため,引き続き定電位電解によるFe-Al合金の組成制御を試み,p型の熱電変換特性を有するFe-Al合金の電解作製を実施することで,p型の熱電変換特性を有する電析物の電解作製条件を最適化する.
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Causes of Carryover |
(理由)本年度の当該助成金の使用にあたっては,最低限必要な物品の購入を計画し,その計画通りに実施した.年度末において残額が生じたが,長期保管に適さない薬品などを無理に購入することを避け次年度にて使用することにした. (使用計画)次年度の物品購入費の一部にあてる.
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Research Products
(3 results)