2016 Fiscal Year Research-status Report
イオン液体を用いた形態制御を伴う電解析出法による金属回収技術開発
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15K06527
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
新井 剛 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (60415867)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イオン液体 / [Cnmim][PF6] / Pd(II) / 電析 / アルキル側鎖長 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はイオン液体(IL)に抽出された金属イオンをマイクロ化学チップ等の電解セルを用いて電解還元により形態制御を試みることを目的としている。本年度は、ILに[Cnmim][PF6](n=4, 6, 8)を選定し、(1)[Cnmim][PF6]に抽出されたPd(II)の電気化学挙動及び(2)抽出されたPd(II)の電解析出挙動を中心に研究を実施した。 (1)ではPd(II)を抽出した[Cnmim][PF6]の酸化還元ピークを測定した。その結果、側鎖長に依らずPd(II)を抽出した[Cnmim][PF6]は、-1.1V(vs. Fc/Fc+)及び-0.6 V近傍に還元ピークを観測した。このことから、[Cnmim][PF6]のPd(II)の電解還元による回収の可能性が示唆された。また、[Cnmim][PF6]のアルキル側鎖長の増加に伴い電流密度の減少が確認された。これはWalden則による溶液の粘度とモル伝導率の積が一定になることに起因すると考えられる。また、[Cnmim][PF6](n=4, 6, 8)の粘度は、273 Kにおいてそれぞれ332.2、681.4、802.9 mPa・sであった。これらの試験結果より、[C4mim][PF6]が最も優れた電気化学特性を有することが示された。 (2)ではPd(II)を抽出した[Cnmim][PF6]に-3 mAで定電流電解を行い、得られた電析物の表面観察及び組成分析を行った。SEMによる表面観察より0.1 M 塩酸水溶液におけるPdの電析物はデンドライト状であるが、[Cnmim][PF6]からのPdの電析物は粒状であることが確認された。さらに、[Cnmim][PF6]のアルキル側鎖長増加により電析物の結晶粒径の粗大化が観察された。これはアルキル側鎖長の増加に伴い、Pd(II)の電流密度が減少することに起因すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの試験結果から、塩酸水溶液中における[Cnmim][PF6] (n=4, 6, 8)に抽出されたPd(II)の電気化学挙動及び[Cnmim][PF6]に抽出されたPd(II)の電解析出挙動の基礎的なデータを得ることができた。当初予定していた研究計画に対し、概ね順調に研究が遂行できている。本年度は、昨年度の結果から[Cnmim][Tf2N]の代替のILとして[Cnmim][NfO]や[P4444][CF3COO]の合成も試み、金属イオンの抽出挙動について検討を重ねてきた。しかし、[Cnmim][NfO]は合成が比較的困難であることや[P4444][CF3COO]は操作性が困難など、[Cnmim][PF6]以上の優位性が見いだせなかった。そこで本研究の目的の達成には、ILとして[Cnmim][PF6] (n=4, 6, 8)が最適であると考え、以降の電気化学試験は[Cnmim][PF6]を用いることとした。また、ILの金属イオンの抽出機構についてはFT-IRやNMR等を用いて解明を続けている。また、[Cnmim][PF6]に抽出されたPd(II)の電析について、本年度は電析条件等のブラッシュアップを中心に実施した。さらに、水溶液系で得られる電析物との比較しながら研究を進めた。その結果、水溶液とIL中では、電析物の形状に大きな差異が確認された。本年度の電析試験は単一の電解セルを用いて実施しており、マクロ的な電解挙動の確認であるため、今後は電析物の形態制御に資する電解セルでの検討が必要である。これらの検討は何れも今後の研究遂行と共に実施可能であり、大きな研究計画の変更は必要としない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、[Cnmim][PF6] (n=4, 6, 8)に抽出されたPd(II)の形態制御を伴う電解析出に特化して試験を実施する。これまでに引き続き、マクロな電解セルによる電析挙動について検討を重ねる。また、[Cnmim][PF6]のアルキル側鎖長や電解条件によるPdの電析物の形態等を観察し、形態制御試験の基礎データを積み上げる。さらに、得られた基礎データを基に微小流路を有するマイクロ化学チップやフロー型電解セル等を用いて電析物の形態制御を実施し、電析物の形状観察や電析条件の選定を行う。これらの試験結果から[Cnmim][PF6] (n=4, 6, 8)に抽出されたPd(II)の形態制御を伴う電解析出条件を選定すると共に、IL抽出と電気化学を組み合わせた新たな金属回収システムの提案を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた研究が順調に進行し、想定していた消耗品を購入しなくてすんだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は電解析出試験を実施するが、初めての実験条件も多い。そのため、これらの試験に要する試薬や消耗品に充当する予定である。
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Research Products
(3 results)