2016 Fiscal Year Research-status Report
感温性磁性吸着剤の開発-温度による細孔入口径及び分散凝集状態の制御-
Project/Area Number |
15K06536
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
村上 賢治 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (10272030)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 温度応答性吸着剤 / 磁性吸着剤 / 感温性高分子 / 分子ふるい / 有機無機複合体 / マグネタイト |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに鉄をメソポーラスシリカ(MS)上に担持した後,水素還元することで,マグネタイト/MS複合体(M/MS)が合成できることを明らかにしている。本年度は,①界面活性剤/MS上に鉄を含浸担持する時の界面活性剤の有無,②鉄を担持する時の溶媒の違い(水及びエタノール)がM/MSの構造にどのような影響を及ぼすか検討した。鉄含浸後は全ての試料で600℃,5時間の焼成,300℃,1時間の水素還元を行った。5 wt%の鉄担持量になるように合成したが,鉄担持量は3~4.5 wt%となり,溶媒種による違いは見られなかった。また,どの試料でも比表面積は約1000 cm2/gであった。このことは,界面活性剤除去後にMSに鉄を担持しても,鉄はMSの細孔を閉塞しないことを示している。X線回折の結果,焼成後にはヘマタイト,水素還元後にはα-Feおよびマグネタイトとして鉄は存在していることが分かった。マグネタイト/α-Feの強度比は界面活性剤存在下で焼成した方が,大きいことも明らかとなった。M/MSを磁石で回収する試験を行った結果,界面活性剤存在下で焼成した試料の方が回収率は高い(80 wt%)ことも分かった。 更に,昨年度合成した感温性高分子(PNIPAM)/マグネタイト/ゼオライト複合体(PMZ)について,100 ppmのCsを含む水溶液1 Lに試料を1 g入れ,25℃で90分攪拌することでCs吸着を行った。その結果,ゼオライト単独では0.67 mmol/gのCs吸着量であったのに対し,PMZでは0.68 mmol/gと殆ど違いはないことが分かった。このことはマグネタイトやPNIPAMの被覆はゼオライトの吸着には全く影響を与えないことを示している。また,高勾配磁気分離法によるPMZの回収試験の結果,20℃で既に回収率は92%と高かったが,50℃では更に向上して96%にまで達した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度既にM/MSは合成できていたが,試料中に含まれるマグネタイトの割合が少なかったため,磁性は殆ど示さなかった。それに対し,界面活性剤存在下で焼成して合成した試料の場合,本研究で目指していた性質を有する複合体を合成することができた。PNIPAMの被覆については問題なく実施できると考えている。一方,本年度は次年度に実施を計画していたPMZの高勾配磁気分離試験を前倒しで実施することができ,かつ,予想通り高温では回収率が向上することを示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は,P/M/MS複合体の合成や色素(メチルオレンジ,ブロモフェノールブルー,コンゴーレッドなど)吸着特性の解明,温度応答性の制御を行いつつ,合成した感温性磁性吸着剤を用いて高勾配磁気分離装置による回収試験も実施する。高勾配磁気分離法によるP/M/MSの回収効率は外表面に存在する感温性高分子量,水温に依存すると考えられる。これまでの研究で感温性高分子の相転移温度(LCST)より高温では,感温性高分子が凝集して沈殿することが分かっている。そこで,新しく合成した感温性磁性吸着剤の凝集挙動をUV-Visや光学顕微鏡などを使用して検討し,感温性高分子量や他のモノマーとの共重合割合の最適化を図る。 最後に高勾配磁気分離装置を用い,吸着剤の回収率に及ぼす操作条件(液流量,溶液温度,吸着剤/溶液比など)の影響を検討し,回収率が最大になるような操作条件の探索を行う。
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