2016 Fiscal Year Research-status Report
木材の熱分解と水熱脱水反応を組み合わせた糖脱水物への新転換ルート開拓
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15K06555
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
長谷川 功 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (20346092)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 熱分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目となる平成28年度においては、タール中の有用物質である無水糖の収率増加を目的とし、金属化合物を添加してセルロースの熱分解を試みた。 実験方法としてはセルロース約250 mgに金属化合物を約2.5mgから10mgまでの範囲で物理混合させた。電気炉で窒素流量 100 ml/min、室温から昇温速度 5 ℃/min、最終温度 400から600℃、保持時間 30 分の条件で熱分解し、反応管より下流の配管及びチューブ、トラップに凝縮した生成物をアセトンに溶解させた。アセトンを留去し残存物をタールとした。 主たる実験結果としては、金属化合物を加えることでセロビオサン付近の分子量を示すピークが減少していた。これはアクティブセルロースへ至るグリコシド結合の開裂を促進したためと考えられる。金属種によっては添加によって無添加に比べてタール収率を減少させ、炭化物収率を増大させていた。その際に無水糖含有率を著しく減少させていた。しかし、一部の化合物では、タール収率、炭化物収率は減少し、無水糖収率は増加した。これは、ほとんどの金属種の場合でフラグメンテーション反応を促進する作用があり、アルデヒド、ケトンなどのガスやチャー化する反応経路が促進されたためチャーが増大したが、いくつかの化合物の添加により競合する脱水反応を促進し、タール成分の脱水反応が進行したため無水糖収率が増大したと考えられる。添加量の影響を調べたところ、添加量の増大により脱水反応が更に促進し、セロビオサンから、より無水糖を生成したが、3 wt %で最大値をとった。セロビオサンやアクティブセルロースから生成された無水糖が更に過分解が起こり、これ以上では収率が小さくなったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
どの金属化合物の添加でもタール中の二量体のセロビオサンが減少する一方で、一部のカルシウム化合物を添加した際は無水糖収率を増やし、アルカリ性の塩を添加した際は炭化物の収率を増やすことのメカニズムの相違を明らかにすることができたため、順調に進展していると判断した。おおよそ計画に沿って遂行し、順調に結果を得ることができていると考えている。ここまでの2年間において、モデル物質での検討によりその反応挙動の大まかな把握に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画のとおり、前年度に得た最大収率の多糖類由来タールを水熱脱水反応することによって、生成物分布を追跡する。生成物同定と定量には購入済みの液クロを使用する。また、熱分解での多糖類タールの収率が高くても、分子量や架橋度などのタール物性が水熱反応特性に大きな影響を与えることが予想される。それは熱分解での昇温速度や添加物に依存すると考えられ、それらのタール物性と糖脱水物収率との関係についても考察する。最後に、熱分解/水熱反応を組み合わせたプロセスを提案する。
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Causes of Carryover |
本年度購入した分析機器備品(UV-VIS吸光度検出器)において、当初見積もりより値引きがあったため次年度使用額が生じた。その次年度使用額は10数万円であり、ほぼ値引きに相当する。よって、概して計画通りに予算を使用しており、またその内容も妥当であると考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品費として頻度が高いガラス器具やステンレス配管部品、分析用および反応ガス、試薬類に使用する予定である。分析機器用の消耗品として熱天秤の白金セルや液体クロマトグラフ用のカラムなど定期的な交換が必要なため購入予定である。旅費に関しては、関連研究発表が多い関連の学会への動向調査と成果発表のための出張を予定している。
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