2016 Fiscal Year Research-status Report
フォトクロミック分子を基盤とする有害物質の高感度オプティカルセンシング
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15K06556
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
白石 康浩 大阪大学, 太陽エネルギー化学研究センター, 准教授 (70343259)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 隆之 大阪大学, 太陽エネルギー化学研究センター, 教授 (80208800)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分子センサー / 有害物質 / オプティカルセンシング / シアン / 吸収 / 蛍光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、水中に含まれるシアン(CN-)、水銀(Hg2+)などの有害イオン種、ならびに一酸化炭素(CO)、硫化水素(H2S)などの有害ガスを、吸収あるいは蛍光スペクトル測定により迅速かつ正確に定量するオプティカル分子センサーを開発する。スピロピラン化合物の開環/閉環反応の制御を基盤とした申請者独自の分子設計により、①高い選択性、②迅速な応答、③高感度な応答の三つの特長を有する分子センサーを開発する。これらの研究を通して、汎用の分析機器により環境中の微量有害物質を正確に定量するセンシング技術を実現するとともに、高感度分子センサーの開発に向けた分子設計の礎を築く。 今年度(平成28年度)は、シアン化物イオンの検出に関する研究を進め、(i)クマリン-スピロピラン水素化複合体、(ii)クマリン-キノキサリン複合体の二種のシアンセンサーを開発した。(i)クマリン-スピロピラン水素化複合体においては、求電子性の高いスピロ炭素に対してシアンが付加することにより開環構造を形成し、蛍光発光を出現させるメカニズムにより、低濃度のシアン検出が可能になることを明らかにした。また、(ii)クマリン-キノキサリン複合体においては、両者をシアンとの反応性の高いイミンで結合させた。イミン部位は、HCNとのストレッカー反応による二重結合の消失により、両者間での電荷移動を抑制する。そのためクマリン由来の強い蛍光が出現する。本方法では、これまで困難であった中性pHでのシアン検出が可能になり、生体応用が可能になる新たな分子設計指針を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
種々の反応部位を有する分子センサーの開発によりシアンの蛍光検出が可能であることを明らかにした。半経験的分子軌道法に基づく計算化学により、反応サイトとシアンの反応性、ならびに蛍光・吸収を制御する電子状態などが明らかになってきている。これらの知見を応用すれば、迅速・選択的かつ高感度なシアンセンサーの開発が可能になる感触を得ている。それゆえ、区分②に該当すると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
水銀、鉛などの有害金属、ならびに硫化水素などの有害ガスを分析するための分子センサーの開発を進める。また、今年度進めたシアンセンサー開発をさらに発展させ、反応時間の短縮および感度の向上(検出限界の向上)を目指した研究を進める。
平成29年度に請求した研究費は、当初の予定どおり、実験試薬をはじめとする消耗品、ならびに成果発表のための旅費として用いる。
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