2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K06563
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中山 哲 北海道大学, 触媒科学研究所, 准教授 (10422007)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 不均一系触媒 / 第一原理計算 / 酸化セリウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、不均一系触媒反応における熱揺らぎと溶媒の効果に着目し、それらが触媒活性に及ぼす影響を具体的な例を基に検討している。本年度は昨年度に引き続き、酸化セリウム触媒を対象とした第一原理シミュレーションを行った。 特に、酸化セリウム触媒による2-シアノピリジンの水和反応に関して、第一原理計算を用いて、その反応メカニズムの理論的解明を行った。この反応は酸化セリウム触媒のみが低温で高い活性を示し、他の金属酸化物触媒では活性がほとんどないことが分かっており、さらに構造異性体間で活性が大きく異なる基質特異性が見出されている。本研究では、酸化セリウム触媒上での2-シアノピリジンの吸着状態と反応メカニズムを解明し、基質特異性の発現メカニズムについて議論した。 まず、酸化セリウム上での2-シアノピリジンの吸着構造を決定した。その結果、酸化セリウムの表面酸素と2-シアノピリジンのCN基のC原子とが結合する特異な吸着構造を見出した。ほとんど反応が進行しない4-シアノピリジンでは、ピリジン環の水素原子と表面との立体障害のため、この吸着構造は不安定となる。次に、この吸着構造に溶媒である水を系に加え、第一原理分子動力学シミュレーションにより水和反応のメカニズムを調べた。自由エネルギー計算にはメタダイナミクス法を用いた。反応解析の結果、この水和反応は酸化セリウムの格子酸素が抜けることで触媒反応が進行することを予測した。室温のような低温で格子酸素が反応に関与する例は極めて例外的であり、溶媒も含めた熱統計力学的第一原理シミュレーションにより、酸化セリウム触媒の特異性について説明することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不均一系触媒の熱揺らぎと溶媒効果に関しての研究に取り組んでおり、具体的な系として酸化セリウム触媒による液相有機合成反応をターゲットとしている。反応メカニズムの解析を通じて触媒機能に関する知見を得ており、当該研究目的に沿って一定の成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、酸化セリウム触媒における液相有機合成反応をターゲットとする。今後は二酸化炭素とメタノールからのジメチルカーボネート合成に関しても同時に研究を進め、反応メカニズムの解明と酸化セリウム触媒の役割について明らかにする。 得られた成果は学会や誌上にて積極的に発表する。
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Causes of Carryover |
固体酸化物を用いた触媒反応の解明のために、主に第一原理分子動力学法を用いて固体酸化物/液相界面のシミュレーションを行ってきた。特に酸化セリウム触媒を用いた解析を中心に行っているが、当初予定した反応機構とは異なった、格子欠陥を介する新しい反応機構が見つかっており、その結果をより詳細に解析するために、当初予定していた以上に長時間の第一原理分子動力学計算が必要となり延長を申請した。助成金の主な使途は京都大学と九州大学のスパコンの使用料支払いであるが、今年度は予定より少ないノード数での利用であった。翌年度はワークステーション1台の購入とスパコンの使用料にあてる。
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Research Products
(16 results)