2015 Fiscal Year Research-status Report
結晶-結晶化学変換を利用して調製したペロブスカイト型酸化物の低温触媒反応系の開発
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15K06569
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
八尋 秀典 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (90200568)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ペロブスカイト型酸化物 / シアノ錯体熱分解法 / 低温焼成 / 流通系焼成装置 / シアノシリル化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,シアノ錯体熱分解法(CN法)を用いて様々な焼成条件で調製したペロブスカイト型酸化物の物性評価を行った.CN法を用いて大気中で焼成して得られたペロブスカイト型酸化物LaFeO3の比表面積と焼成温度・焼成時間の関係について調査した.その結果,焼成温度の増加とともに,比表面積は低下した.さらに,焼成温度が同じときには,焼成時間の増加とともに比表面積は低下した.次に,様々な雰囲気でシアノ錯体を焼成するために流通系の焼成装置を用いてペロブスカイト型酸化物を調製した.酸素,空気,湿潤窒素,二酸化炭素を流通させて300 oCで1 h焼成して得られた試料のXRD測定を行ったところ,酸素を流通して焼成した場合,ペロブスカイト型酸化物に帰属されるピークがみられ,LaFeO3の単一相の形成が確認された.試料の温度変化を熱電対を用いて追跡したところ,250 oC付近まで管状炉の温度が上昇したところで,試料の燃焼が起こることで局所的に高温となり,目的のLaFeO3が形成することがわかった.そこで、酸素を流通し,室温下で試料の一部をニクロム線に通電することで局所的に強制的に加熱すると,試料の発熱状態が全体に伝搬し,LaFeO3の単一相の形成が確認された.また,以前用いたSmFeO3触媒と同様に種々の焼成温度で調製したLaFeO3触媒を用いたベンズアルデヒドのシアノシリル化反応について検討したところ,SiO2-Al2O3のような固体酸触媒よりも高い触媒特性を示すことが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の主な計画の「①多核金属錯体前駆体およびペロブスカイト型酸化物の合成と評価」に関して,シアノ錯体熱分解法(CN法)を用いて様々な焼成条件で調製したペロブスカイト型酸化物の物性評価を行った.大気中で焼成して得られたペロブスカイト型酸化物LaFeO3の比表面積と焼成温度・焼成時間の関係について調査した結果,焼成温度の増加とともに,比表面積は低下し,焼成温度が同じときには,焼成時間の増加とともに比表面積は低下することがわかった.また,流通系の焼成装置を用いたところ,酸素を流通して焼成した場合,250 oC以上の焼成温度でペロブスカイト型酸化物LaFeO3の単一相の形成が確認された. そこで,酸素流通下,試料の一部をニクロム線に通電し,局所的に強制的に加熱することで,室温でLaFeO3の単一相の形成が確認された.「②ペロブスカイト型酸化物表面の観察」に関して,LaFeO3の基本的な物性データは順調に測定し,解析が進んでいる.「③ペロブスカイト酸化物を利用したシアノシリル化特性の評価」に関して,液-固反応として,酸塩基反応であるシアノシリル化反応に対する種々の調整したペロブスカイト型酸化物触媒のシアノシリル化反応活性評価を行った. Aサイトランタノイド金属種の異なるペロブスカイト型酸化物LnFeO3のシアノシリル化反応活性は,Aサイト金属のイオン半径の減少とともに活性が向上したことから,表面酸素濃度が大きくなりブレンステッド酸点が増えたことが活性が向上した原因であることがわかった.以上のように,本申請課題は,当初の目的通りに進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究方針である「③ペロブスカイト酸化物を利用したシアノシリル化特性の評価」を続行する.特に,ペロブスカイト型酸化物の結晶成長や表面酸素濃度が反応活性に影響を与えていることに着目して,さらに詳細に検討を行う.また,Diels-Alder反応などの酸塩基反応やアルコールの酸化反応などのシアノシリル化反応以外の反応系への応用について検討を行う.また,「①多核金属錯体前駆体およびペロブスカイト型酸化物の合成と評価」と「②ペロブスカイト型酸化物表面の観察」についても継続して検討を行う.
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Causes of Carryover |
平成27年度当初計画した予算の大半は,薬品類や各種標準ガスや調製用器具といった消耗品費であったが,予定以上に安価で購入できたことおよび効率的に薬品や器具が利用できたことにより,次年度以降に繰り越す結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の研究費は,当初予定した使用計画に加えて新しく計画する触媒反応のための薬品類や各種標準ガスや調製用器具といった消耗品費および愛媛大学の共通機器の使用料などに使用する予定である。
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Research Products
(15 results)