2016 Fiscal Year Research-status Report
結晶-結晶化学変換を利用して調製したペロブスカイト型酸化物の低温触媒反応系の開発
Project/Area Number |
15K06569
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
八尋 秀典 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (90200568)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ペロブスカイト型酸化物 / シアノ錯体 / 熱分解法 / シアノシリル化反応 / クネーフェナーゲル縮合反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,シアノ錯体熱分解法(CN法)を用いたAサイト置換ペロブスカイト型酸化物の調製方法の検討を行った.K3[Fe(CN)6]水溶液とAgNO3水溶液を混合し,得られたAg3[Fe(CN)6]の水溶液をさらにNH4Cl水溶液と混合することで,(NH4)3[Fe(CN)6]原料を調製した.La(NO3)3・6H2OとSr(NO3)2の1-a: aの混合溶液(H2O or CH3OH)に上記原料を加え,前駆体(NH4)xLa1-xSrx[Fe(CN)6]・nH2Oを調製した.得られた前駆体をマッフル炉中,1000 ℃,1 h,大気雰囲気下で焼成し,ペロブスカイト型複合金属酸化物La1-xSrxFeO3を調製した.調製した原料のTG-DTA測定から,目的の(NH4)3[Fe(CN)6]が生成していることを確認した.XRFより求めた前駆体(NH4)xLa1-xSrx[Fe(CN)6]・nH2O中のx値は混合溶液のa値よりも少ないが,a値が増加するにつれてx値が増加した.また,H2O溶媒では,Srは前駆体中にほとんど導入できなかったのに対し,溶解度の低いCH3OH溶媒を用いると前駆体中のSr量は大幅に向上した(a= 0.5でx = 0.1).調製した前駆体を1000 ℃焼成した試料のXRDパターンはLaFeO3と類似であり,Sr固溶によるピークの高角度側へのシフトが確認できた.以上の結果から, 本法により目的の複合金属酸化物La1-xSrxFeO3 (0 ≦ x ≦ 0.1)が合成できることがわかった. 以前,CN法で調製したLaFeO3触媒を用いたシアノシリル化反応について検討したところ,SiO2-Al2O3のような固体酸触媒よりも高い触媒特性を示すことを報告したが,なぜそのような触媒特性を示すかは明らかとなっていなかった. そこで,塩基触媒で反応が促進されるクネーフェナーゲル縮合反応にLaFeO3触媒を用いたところ,無触媒の場合よりも反応が促進されることがわかった.以上の結果から,LaFeO3触媒がSiO2-Al2O3のような固体酸触媒よりも高い触媒特性を示すのは,LaFeO3触媒上のブレンステッド酸点と塩基点が協奏的に働いていることが原因であると推測した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の主な計画の「①多核金属錯体前駆体およびペロブスカイト型酸化物の合成と評価」に関して,シアノ錯体熱分解法(CN法)を用いたAサイト置換ペロブスカイト型酸化物の調製方法の検討を行った.K+の残留を防ぐために(NH4)3[Fe(CN)6]原料を新たに調製し,La(NO3)3・6H2OとSr(NO3)2の1-a: aの混合溶液(H2O or CH3OH)に上記原料を加え,前駆体(NH4)xLa1-xSrx[Fe(CN)6]・nH2Oを調製した結果,前駆体合成時にCH3OH溶媒を用いることで目的の複合金属酸化物La1-xSrxFeO3 (0 ≦ x ≦ 0.1)が合成できることがわかった.「②ペロブスカイト型酸化物表面の観察」に関して,LnFeO3の基本的な物性データは順調に測定し,解析が進んでいる.「③ペロブスカイト酸化物を利用したシアノシリル化特性の評価」に関して,LaFeO3触媒がSiO2-Al2O3のような固体酸触媒よりも高いシアノシリル化触媒特性を示す原因を考察するために,塩基触媒で反応が促進されるクネーフェナーゲル縮合反応にLaFeO3触媒を用いたところ,無触媒の場合よりも反応が促進されることがわかった.以上の結果から,LaFeO3触媒がシアノシリル化反応に対して高い触媒特性を示すのは,LaFeO3触媒上のブレンステッド酸点と塩基点が協奏的に働いていることが原因であると推測した.以上のように,本申請課題は,当初の目的通りに進展している.
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究方針である「③ペロブスカイト酸化物を利用したシアノシリル化特性の評価」を続行する.特に,ペロブスカイト型酸化物のBサイト金属が反応活性に大きく影響を与えていることに着目して,CN法以外の方法も駆使して様々なBサイト金属を導入したLaMO3触媒を調製し,詳細に検討を行う.また,Diels-Alder反応などの酸塩基反応やアルコールの酸化反応などのシアノシリル化反応以外の反応系への応用について検討を行う.「①多核金属錯体前駆体およびペロブスカイト型酸化物の合成と評価」では,複合金属酸化物La1-xSrxFeO3 (0 ≦ x ≦ 0.1)がCN法で調製できることがわかったので,燃料電池の電極材料となる可能性があるため,さらにBサイトもCoあるいはFeとCoの混合系が同様な方法で調製できるかどうかを含めた検討を継続して行っていく.また,「②ペロブスカイト型酸化物表面の観察」についても継続して検討を行う.
|
Causes of Carryover |
薬品類や各種標準ガスや調製用器具といった消耗品の費用を今年度は少し抑えることができたため.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の研究費は,薬品類や各種標準ガスや調製用器具といった消耗品費,学会などへの成果報告や研究打ち合わせのための旅費および愛媛大学の共通機器の使用料などに使用する予定である。
|
Research Products
(19 results)