2015 Fiscal Year Research-status Report
極表層プラズマ反応場を駆使した大面積触媒ナノ粒子単層薄膜の生成に関する研究
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15K06573
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
箱田 照幸 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (70354933)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 春也 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (70354941)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 触媒・化学プロセス / 触媒調製化学 / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、従来研究には無い粒子径の揃った貴金属ナノ粒子を大面積で高密度に単層で配列するユニークな触媒ナノ粒子薄膜の生成手法に関するもので、物質の極表層に高密度プラズマ場を形成できる数十keVの低エネルギー電子線を駆使して、気液界面での貴金属ナノ粒子を高密度で生成・配列した触媒薄膜の新たな合成法の確立を目的とする。 平成27年度は、本研究で設計・製作したコリメータ付照射容器を用いて、水溶液中に1 mmol/Lの塩化金酸(III)イオン(以下、Auイオン)と、2-プロパノールやエタノールを0.5~20v%の濃度で含む水溶液に電子線照射した結果、1v%の低濃度アルコール条件で水溶液表面に膜状生成物の生成が促進し、2-プロパノールの場合において5-20nmで比較的粒径が揃い、かつ高密度な粒子薄膜が生成することを見出した。またこの粒子膜のXPS分析から、この膜の主成分はAuで、2-プロパノールの条件において膜中Auの約85%程度が金属状であること、またエタノール共存下ではAuイオンが還元されにくいことを明らかにした。さらに、Auナノ粒子膜をアナターセ型TiO2基板に転写後、加熱温度200℃で1000 ppmvのCO/空気を流通した結果、CO2に相当する赤外吸収ピークが観察され、このAuナノ粒子膜はCOを酸化できる触媒性能を有することを見出した。これらの結果から、対象貴金属がAuについてのみではあるが、粒子や薄膜の生成挙動が明らかとなり、大面積の貴金属ナノ粒子単層薄膜の合成法の開発につながる重要な成果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子加速器メーカーの協力のもと、電子発生管内の熱電子放出用のフィラメントの長さを従来の5㎜から10mmとすることにより、本研究の遂行に必要な約20㎝2の照射面積を有する電子発生管の改良に成功した。また、雰囲気ガスの流通状態や試料水温を制御し、かつ電子線を約0.8~8mm2の面積まで段階的に絞ることができるコリメータ機能を有する電子線照射容器(コリメータ付照射容器)を自ら設計・作製を行った。さらに、照射水溶液の“その場”分光システムの要となる分光分析対応照射容器も設計・製作した。 これらの反応容器を用いて、低濃度アルコール共存下で対象貴金属として金を中心に、当初の計画に沿って、種々の水溶液組成、電子線照射条件で粒子薄膜の生成を試みるとともに、貴金属ナノ粒子薄膜の形態・構造、化学状態について明らかにした。またTiO2を主に、セラミック基板に転写したAuナノ粒子薄膜がCOの酸化触媒能を有することを見出し、貴金属ナノ粒子単層薄膜の合成法の開発につながる重要な知見と得た。この一連の成果を第39 回静電気学会全国大会で発表した。これらの結果から、Auについてのみではあるが粒子や薄膜の生成挙動が明らかとなり、大面積の貴金属ナノ粒子単層薄膜の合成法の開発につながる重要な成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでAuを対象とした研究で確立・得られたノウハウを十分に活用し、一部着手が遅れている白金やパラジウムなどの貴金属について研究を順次拡大するとともに、Auを中心にこれらの貴金属についても、転写するセラミック基板をTiO2だけでなくAl2O3やSiO2などにも応用し、粒子薄膜の構造と触媒活性の定量解析を実施し、基板(担体)と触媒貴金属間の相互作用(SMSI効果)について考察を行う。 また、単成分の貴金属イオンを対象とした知見を十分に活用し、複数成分の貴金属イオンを含む水溶液について水溶液組成や種々の電子線照射条件をパラメーターとし、貴金属ナノ粒子薄膜の生成を試みる。生成した粒子薄膜の形態・構造、化学状態を調べるととともに、試料水溶液の“その場”分光分析の結果も総合的に解析し、複数成分貴金属ナノ粒子薄膜の生成過程を明らかにする。 さらに、得られた成果について、放射線化学討論会等で発表するとともに、成果の一部を学術雑誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
本年度竣工した材料科学研究棟への実験室の引っ越し、また実験条件の制御性能向上を目的として照射容器等の仕様決定や製作等に、当初計画より多くの時間を要したため、当初予定していた白金やパラジウムなどの貴金属の試薬やそれを用いた実験消耗品の購入等が当該年度中に実施できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、れまでAuを対象とした研究で確立・得られたノウハウを十分に活用し、一部着手が遅れている白金やパラジウムなどの貴金属について研究を順次拡大するとともに、またこれを用いた実験で必要な消耗品も年度の初めに順次購入する予定で、既に複数社から見積もり等を入手済みである。
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Research Products
(2 results)