2016 Fiscal Year Research-status Report
麹菌の高電圧パルス電界による増殖促進効果と食品関連プロセス設計
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15K06574
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
大嶋 孝之 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (30251119)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷野 孝徳 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (50467669)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高電圧パルス電界 / コウジカビ / クエン酸 / 発酵 |
Outline of Annual Research Achievements |
食品プロセスや物質生産技術において有用な微生物であるAspergillus属(麹菌)の培養において、高電圧パルス電界(HV-PEF)を利用すると大幅に増殖速度が増加することが予備実験により確認されている。本研究ではHV-PEFによる増殖促進メカニズムの解明とその物質生産技術への応用の可能性を調査研究する。具体的にはHV-PEF印加条件ならびに培養条件が増殖促進に及ぼす影響の解明、増殖促進に伴う細胞機構の変化の調査、増殖促進を利用した物質生産技術の開発の3点に着目した研究遂行を行っている。 PEFを印加することで培養したA. nigerの外観に変化が観察された。通常の培養(control)と比較しPEF印加を行った培養では菌体量が増加している様子が確認された。培養18日後の菌体重量の測定を行ったところ、controlとPEF印加を行った培養では菌体乾燥重量はそれぞれ0.33 g、0.40 gであり、PEFを印加することで増殖が促進されることが確認された。培養時のグルコースの経時変化を測定したところ全てのグルコースが消費されるまでに要した時間はcontrolでは18日であったが、PEF印加培養では培養8日であった。グルコースが全て消費された時点でのクエン酸収率はそれぞれ32.0%、20.2%とPEF印加培養では収率は低下したものの、生産速度では0.70 g/(L・day)、0.95 g/(L・day)と1.4倍の増加が確認された。グルコース濃度が一定値を下回るとクエン酸が消費されてしまうことが確認されたため、グルコース濃度を保つため流加培養を実施したところ、controlとPEF印加培養それぞれで収率は37.8%、39.0%、生産速度は0.96 g/(L・day)、1.68 g/(L・day)とPEF印加培養では大幅に向上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
回分培養においてはAspergillus属(麹菌)が高電圧パルス電界(HV-PEF)により大幅に増殖速度が増加することが確認でき、これに伴いクエン酸発酵の期間短縮が立証されている。今年度はこの成果をもとにジャーファーメンターを用いた流加培養を試みてきた。ジャーファーメンターをAspergillus属に最適化する条件の選定に時間を要し、流加培養における結果が現時点では乏しい状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)増殖促進に伴う細胞機構の変化の調査 HV-PEFが黒麹菌細胞にどのようなストレスとして認識されているかを遺伝子発現プロファイルの変化を調査する。このため申請者らが酵母細胞に対しHV-PEFを印加することで酸化ストレス応答遺伝子が活性化されることを明らかにした成果1)を生かし、本研究においても酸化ストレス応答遺伝子群を初期ターゲットとして設定し、ヒートショックプロテイン遺伝子なども含めたストレス応答遺伝子を中心とし逆転写したmRNA量の増減から黒麹菌細胞に起きている応答を調査する。 (2)増殖促進を利用した物質生産技術の開発 HV-PEFにより誘導される黒麹菌増殖促進現象のクエン酸発酵への応用を試みる。クエン酸発酵は黒麹菌を用いた生産手法が産業レベルで実用化されおり、全世界での生産量約160万トンほぼ全てが発酵法で生産されている。本研究では実際の生産工程に近いpHスタットfed-batch発酵を行い、増殖促進現象を誘導した黒麹菌のクエン酸発酵プロファイルを明らかとし実用化を見据えた技術開発を行う。
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Causes of Carryover |
今年度は海外国際学会での発表を予定していたが、適した国際会議がなかったため見送った。このため旅費の使用額が少なかった。また消耗品の使用額が予定を若干下回ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会へ参加し、本科研費の成果を発信する。また次年度の消耗品費に充てる予定である。
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