2015 Fiscal Year Research-status Report
イオンビーム変異による耐熱性エタノール発酵糸状菌の構築と糖化発酵同時進行への応用
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15K06577
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
星野 一宏 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 准教授 (20222276)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 耐熱性菌 / 糸状菌 / エタノール発酵 / イオンビーム変異 / セルラーゼ / バイオマス |
Outline of Annual Research Achievements |
未利用なバイオマス資源からエタノールを生産させることを目的として、ペントースを高収率で発酵が可能で、さらに、多様なセルロース分解酵素を分泌する野生の糸状菌の開発を行ってきた。本糸状菌は、培養環境により二形性変化を示し酵母化するとともに、リグノセルロースからの直接エタノールを生産する糖化発酵同時進行プロセス(CBP)へ適応できると期待されている。しかし、分泌するセルラーゼの至適温度と至適発酵温度が異なることから、効率の高いエタノール生産は達成させることはできない。この問題を解決する方策として、エタノール発酵糸状菌の増殖および発酵温度を向上させこと最良の解決策である。この様な背景において、運良くイオンビーム変異法により得たエタノール発酵糸状菌変異株の増殖可能温度が向上することを発見した。本研究では、CBPプロセスの効率化を図るために、イオンビーム照射法により耐熱性エタノール発酵糸状菌を構築し、この糸状菌を用いた高温発酵型のCBPプロセスを構築することを目的として、耐熱性エタノール発酵糸状菌変異株の取得、高温安定発酵菌株の育種、耐熱化メカニズムの解明、および高温発酵型CBPへの応用について検討する。その初期段階として、平成27年度はイオンビーム変異法により開発する耐熱性エタノール発酵糸菌の耐熱性を向上させ、安定発酵温度45℃で安定発酵し、さらにCellulaseの高発現株の構築を目指した。その結果、イオンビーム照射法により、53℃で生育でき、42℃でエタノール発酵可能な変異株の創出に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イオンビーム変異法は、近年、植物の変異やバクテリアの変異誘導に利用されてきたい新規な変異誘導技術である。本研究で開発したエタノール発酵糸状菌Mucorもペントース発酵能を向上や二形性変化により酵母化させるためにプロトンあるいはカーボンイオンビームを実施し、育種を行ってきた。本エタノール発酵糸状菌は、接合菌目に属する菌株で、好気条件並びに嫌気条件でヘキソース(Glucose、Mannose、Fructose)やペントース(Xylose、 Arabinose)を、二糖であるMaltose、 Sucrose、 Cellobioseも資化・発酵でき、さらに、Rice starch、 Avicel、 Xylan、Chtinなどの多糖類も資化・発酵が可能である。さらに、Cellulase (endo-β-glucanase, cellobiohydrolase、β-glucosidase)とHemicellulase (endo-β-xylanase, β-xylosidase)を含む多様なバイオマス加水分解酵素の分泌が優れている。平成27年度は、エタノール糸状菌の耐熱化を目的として、分生子に対して500-3,000 Gy強度で変異誘導を行い、50℃以上での生育可能株のスクリーニングを実施した。その後、40℃及び42℃で効率良くエタノール発酵が可能な変異株を得ることに成功した。得られた変異株のエタノール生産及び増殖の特性を培養工学的に明らかすることができた。さらに、同様の変異誘導法により、40℃及び45℃で乳酸発酵糸状菌の変異株の取得にも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度以降は、イオンビーム変異法により得られた耐熱性変異株の耐熱化に係わるメカニズムを解明することを目指し、細胞分裂、細胞構造、代謝、生合成など多様な機構が関与していると考えられる酵素および遺伝子に関して、網羅的に解析するために、以下の2つの方法で実施する計画である。 1)メタボローム解析による細胞内代謝の解明: 耐熱性エタノール発酵糸状菌と親株を各種温度で培養し、その際得られた細胞内の代謝産物をCE-MS/MSで分析することにより、細胞内代謝フローを解明する。解糖経路やペントースリン酸経路、アミノ酸生合成経路、脂肪酸合成経路を検証し、耐熱化に影響を与えている因子を抽出する。 2)プロテオーム解析による細胞内発現酵素の解明: 耐熱性エタノール発酵糸状菌と親株を各種温度で培養し、その際得られた細胞内タンパク質に関して、2D-PAGE + LC-MS/MSを行い、特に、細胞壁の形成に関わる酵素群、例えば、キチン合成酵素、脂肪酸伸張酵素、脂肪酸不飽和化酵素などをターゲットとして、発現タンパクの相違を検証し、耐熱化に関与している酵素群の特定を行う。さらに、その裏付けとして、我々が既に有しているゲノムグラフト情報と耐熱性変異株のゲノム情報を比較し検討し、発現タンパク質と耐熱化との関係を解明する。 1)および2)の結果を踏まえ、エタノール発酵糸状菌の耐熱化のメカニズムを総合的に解明する。さらに、これらの成果により構築して耐熱性エタノール発酵糸状菌を活用したバイオバイオプロセスにより、未利用バイオマスからの糖化発酵同時進行を実施する予定である。
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Research Products
(6 results)