2015 Fiscal Year Research-status Report
環境調和型材料創成を志向したシリカ重合促進タンパク質グラシン利用の基盤技術
Project/Area Number |
15K06581
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
清水 克彦 鳥取大学, 産学・地域連携推進機構, 准教授 (90326877)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有馬 二朗 鳥取大学, 農学部, 准教授 (80393411)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | バイオシリカ / バイオミネラリゼーション / アミノペプチダーゼ / グラシン / カイロウドウケツ |
Outline of Annual Research Achievements |
六放海綿類カイロウドウケツのシリカ骨格中に見出された,中性pH においてシリカ形成を促進する新規タンパク質グラシンについて,(1) グラシンの配列とシリカ形成との関係を明らかにし,シリカ形成におけるグラシンの分子機構を理解し,(2) グラシンやその部分ペプチドを組換えタンパク質と融合させ,組換えタンパク質のシリカへの固定化を試みることで,グラシンの新たなタンパク質固定化のタグとしての利用可能性を探ることを目的としている. 本年度は (1) について,グラシンの各領域の機能を明らかにする実験の準備として,各領域,繰り返しのユニット,グラシン分子を発現するベクターの構築および組み換えペプチドの構築を計画した.目的とするcDNA のPCR 法による増幅やPCR産物のベクターへの挿入を試みたが,グラシンは繰り返し配列が多く存在し,一部にGCリッチな配列が存在することから,コドンユーセージの変換を施した上で,遺伝子の増幅とベクター構築を行った.(2) については,融合タンパク質発現系の構築と組換え融合タンパク質の発現,精製を実施することとし,Streptomyces septatus TH-2 aminopeptidase (SSAP) をモデル酵素として,この酵素にグラシンまたは部分ペプチドをタグとして付与して発現させ,精製や固定化に有効であるかどうかを検討することとした.これに先立ち,各操作段階の確認が容易となるよう,オワンクラゲ緑色蛍光タンパク質 (GFP)をモデルタンパク質とした発現系を確立した.これまでに,グラシンとGFPおよびグラシンとSSAPとの融合タンパク質の発現ベクター構築を完了し,組換えタンパク質を発現させ,GFPおよびSSAP活性を確認した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グラシンの各領域の機能を明らかにする実験の準備として,各領域,繰り返しのユニット,グラシン分子を発現するベクターの構築および組み換えペプチドの構築を計画し,これを試みたところ,目的とするcDNA のPCR 法による増幅やPCR産物のベクターへの挿入が困難であった.これは,グラシンには繰り返し配列が多く存在し,一部にGCリッチな配列が存在することに起因すると考え,コドンの変換を施した上で,遺伝子の増幅とベクター構築を行った.この操作により課題が解消された.融合タンパク質発現系の構築と組換え融合タンパク質の発現においては,コドンを変換した人工配列のグラシンを利用して, SSAPとの融合タンパク質発現ベクターの構築および組換えタンパク質発現を完了した.これに先立ち,オワンクラゲ緑色蛍光タンパク質 (GFP)をモデルタンパク質とした発現系を確立した.グラシン-GFP融合タンパク質発現ベクターの作成およびグラシン-GFP融合タンパク質の利用により,各操作段階の確認が容易となった.グラシン遺伝子ベクター構築では,計画に遅れを生じたが,融合タンパク質発現系構築と発現確認が予想以上に順調に進んだことから,課題は結果的にほぼ予定通りに進行している.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28 年度以降は,予定通りシリカ形成におけるグラシンの各領域の役割を明らかにするため,グラシンの部分ペプチドによるシリカ形成実験を行う.また,グラシンのタンパク質固定化タグとしての有用性を実証するため,組換えグラシン付加タンパク質の固定化・精製条件の検討を実施する. グラシンの部分ペプチドによるシリカ形成実験については,領域ごとのシリカ形成促進活性を測定し,各領域がシリカ形成能を有するか否かを明らかにする.シリカ形成を比色法や蛍光法で定量するとともに,形成されたシリカの形態を電子顕微鏡で観察することにより,配列と形成されるシリカの量や形態,グラシンや繰り返し単位とも比較して各領域の役割を明らかにする. 組換えグラシン付加タンパク質の固定化・精製条件の検討については,大腸菌を溶解して得られる抽出液にケイ酸を加えることで,SSAP のタグ部分でシリカ形成が生じ,このタンパク質だけ沈降してくると期待される.シリカ粒子を洗浄し,精製組換えタンパク質を得る.精製品についてSSAP の活性を測定する.また,SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動により,目的タンパク質が精製されたことを確認する.次に,シリカ形成や洗浄の条件を詳細に検討してSSAP の活性を損なわずに高収率,高純度となる条件を決定する.更には,グラシン全長の代わりにシリカ形成促進領域を付加したSSAP を生産して,同様の実験を実施し,できるだけ短い配列で有効なものを見いだす.
|
Research Products
(8 results)