2016 Fiscal Year Research-status Report
難生産性蛋白質分泌発現系のリバースエンジニアリング
Project/Area Number |
15K06585
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
河原崎 泰昌 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (80303585)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 難生産性蛋白質 / 組換え酵母 / 菌体密度 / 遺伝子発現 / 分泌蛋白質 / 高度糖鎖修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
宿主酵母株を高菌体密度としたときにのみ生産が可能になる組換えラッカーゼをモデル組み換え酵素とし、種々の解析および工学的検討を行った。 ホスト因子を同定するため、網羅的転写産物解析により絞り込んだAdr1、Ime1、Ygr067Cの3種の転写因子遺伝子の発現量をモニターし、さらにそれぞれの欠損株における各種菌体密度応答性遺伝子の発現パターンの変動を調べた。転写産物の定量には、リアルタイムPCR装置を用いた。この結果、広域転写因子であるAdr1は菌体密度に応答した難生産性蛋白質の発現にほぼ無関係であり、Ygr067Cが高菌体密度時に一定の役割を果たしていることがわかった。Ime1は組換え蛋白質の生産というよりも、菌体内の代謝フラックスに広範に影響を与えていた。 一方、ゲスト因子を同定するため、N-結合型糖鎖付加部位(-N-X-T/S-)を予測し、ラッカーゼの酵素活性に影響を与えぬよう、N(アスパラギン)を別のアミノ酸(アスパラギン酸やグルタミン)に置換することを試みた。計4カ所の糖鎖付加部位が検出され、それぞれのアミノ酸置換体を作出した。作出されたアミノ酸置換体発現株のうち、N242D置換体は生育連動的発現系において良好な発現量を示し、また発現に伴う宿主の生育阻害が改善される傾向にあった。ただし生産されたラッカーゼは、N242Dを含む多重置換体であっても依然として高度に糖鎖修飾されており、高度糖鎖修飾と難生産性の間の強い因果関係を立証することはできなかった。 本研究で得られた研究成果の一部を学会で発表した(河原崎ら、日本農芸化学会29年度大会;大橋ら、静岡ライフサイエンスシンポジウム平成28年度大会;)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
菌体の密度に応答して難生産性蛋白質の発現を容易化している責任遺伝子は、小胞体シャペロンやゴルジ体蛋白質など、タンパク質の分泌生産に直接関与しているものではないため、容易化機構の推定は容易ではない。菌体密度の変化にともなう候補遺伝子の発現量変動を繰り返し測定し、実験間誤差を排除するため、時間を要している。また、当初推定していた難生産性蛋白質と高度糖鎖付加の関連性についても、予想糖鎖付加部位を多重置換しても糖鎖付加は依然としておこるため、因果関係を導き出すことが困難であった。 以上より、「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、以下の様な予定で研究を進める(ほぼ当初予定通り) (計画1)網羅的転写産物解析・遺伝学的解析によるホスト因子同定(継続):未知転写因子をコードするYgr067cが、菌体高密度にやや応答し、難生産性蛋白質の発現量増大を引き起こすことがわかった。恒常発現株および誘導発現株を作製し、表現系を解析するとともに、蛋白質の分泌生産に与える影響を解析する。 (計画4)Ygr067Cによって制御される遺伝子群の同定:同遺伝子欠損株を用い、菌体密度により発現量が変動する遺伝子群の発現量をリアルタイムPCRで追跡する。 (計画6)生産プロセス最適化(継続):発現誘導に用いるプロモーターをPCup1とし、炭素限の変更による代謝フラックス変動を排除した上でIme1その他の菌体密度応答性転写因子の挙動を解析する。 (計画7)Ygr067Cpの性質決定(新規):野生株と同遺伝子欠損株は、栄養培地を用いた通常の培養では表現系に明確な差を生じない。両者を高菌体密度とし、RNA-seqによる転写産物の網羅的定量的解析(比較)を行い、Ygr067C標的遺伝子を同定する。
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Research Products
(4 results)