2016 Fiscal Year Research-status Report
キトサン系バイオ凝集剤生産機構の解明と代謝工学的手法を用いたその高生産化
Project/Area Number |
15K06586
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
武尾 正弘 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (40236443)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | キトサン / Citrobacter / 凝集剤 / 代謝工学 / 膜濃縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、キトサン系バイオ凝集剤の生産機構の解明と代謝工学的手法を用いた凝集剤の高生産化を目的に、バイオ凝集剤生産菌株であるCitrobacter属細菌の推定凝集剤生合成経路とドラフトゲノム解析の結果から、(1)凝集剤の多糖化と膜分泌に関わるbfpABCD遺伝子群とその産物の機能解析及び(2)遺伝子破壊あるいは遺伝子導入による凝集剤の高生産化を試み、また、実生産を考慮して(3)培養液からの凝集剤の膜濃縮・回収プロセスを検討した。 凝集剤生産とbfpABCD遺伝子の関連性を明らかにするために、既に、bfpABCD全体あるいは各遺伝子の破壊により凝集活性が完全に失われることを平成27年度までに証明したが、機能解析のために、これらの遺伝子群あるいは各遺伝子を高発現ベクターに導入して大腸菌あるいはCitrobacter属細菌に導入したところ、形質転換株が得られないケースやベクタープロモーターに対して転写方向が逆に挿入されるケースが多発し、これら遺伝子のクローニングが宿主に致死的に働くことがわかった。従って、機能解析に先立ちこれが障害となったため、現在は厳密に発現制御が可能な低コピーベクターでのクローニングを試みている。 次に、C.freundii IFO13545株において糖代謝に関わる3つの遺伝子を破壊したところ、野生株より5-10倍凝集活性の高い菌株の育種に成功した。一方、凝集剤の生産・濃縮・回収プロセスの取り組みとして、30L培養槽を用いた15Lレベルの培養にスケールアップし、平成27年度までに決定した膜処理条件で凝集剤の濃縮・回収をほとんど活性のロスなく達成することに成功した。この濃縮物については、pHを4以下に保つことにより、室温あるいは冷蔵庫で1ヶ月以上活性が保持されることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、バイオ凝集剤生産に極めて重要な多糖化と膜分泌に関わる遺伝子群あるいはその産物の機能解析を目的の一つに挙げているが、その遺伝子(群)のクローニングが宿主に致死的に働くことが明らかとなり、厳密に発現制御可能な遺伝子発現系へ切り替えているところである。そのため、研究に遅れを生じている。 残る2つの課題、即ち、遺伝子破壊や遺伝子導入による凝集剤の高生産化では、高い凝集活性を持つ菌株の育種に成功し、また、膜濃縮による凝集剤の濃縮・回収プロセスの確立については、順調に30L培養槽による中規模培養と15Lクラスの膜濃縮システムを完成させ、スケールアップを達成しており、順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、バイオ凝集剤生産に極めて重要な多糖化と膜分泌に関わる遺伝子群あるいはその産物の機能解析を目的の一つに挙げているが、その遺伝子(群)のクローニングが宿主に致死的に働くことが明らかとなったため、厳密に発現制御可能な遺伝子発現系へ切り替えているところである。具体的には、(1)低コピー数ベクターの使用、(2)低温発現ベクターの使用、(3)厳密発現調節ベクターの使用、(4)宿主染色体への埋め込み、(5)bpfABCD遺伝子欠失宿主の使用、などの戦術で、bfpABCDの発現の問題をクリアーすべく検討を予定している。 残る2つの課題、即ち、遺伝子破壊や遺伝子導入による凝集剤の高生産化では、高い凝集活性を持つ菌株の育種に成功し、また、膜濃縮による凝集剤の濃縮・回収プロセスの確立については、順調に30L培養槽による中規模培養と15Lクラスの膜濃縮システムを完成させ、スケールアップを達成している。前者については、さらなる遺伝子破壊や遺伝子追加により凝集剤の高生産株の育種を推進する。また、後者については、30L培養槽での試行を継続し、十分なデータが取得できれば、200L培養槽へのスケールアップを検討する。
|
Causes of Carryover |
研究対象遺伝子群のクローニングに問題を生じたため、多くの経費のかかるタンパク質・酵素の研究にまで進展せず、その費用分が残ったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究対象遺伝子群のクローニングの問題を解決し、早急にタンパク質・酵素の研究に取り組む。また、凝集剤の生産の改善を目指し、遺伝子工学や代謝工学的手法による高生産菌株の育種、培養のスケールアップなどを実施するため、それらに必要なタンパク質精製試薬、キット、生化学酵素、培養基質の購入、また遺伝子配列解析(受託解析)などに研究費を投入する。
|