2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K06589
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
山崎 智彦 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA研究者 (50419264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 千晶 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA研究者 (10447930)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヘミン / ヘモゾイン / トール様受容体9 / 相互作用 / 末梢血単核細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本件研究では免疫活性化能を有するヘミンから構成される誘導体を新規に合成し、その作用機構を明らかとすることを目的とする。 2010年に阪大の審良教授らによってマラリアに感染した場合にマラリア原虫によって産出される代謝物であるヘモゾインがトール様受容体9(TLR9)のリガンド分子であることが報告された。ヘモゾインはヘミンの結晶であり、水に不溶であるため、TLR9とヘモゾインの相互作用は未解明のままである。本研究では、水溶性ヘミン誘導体を合成し、水溶性ヘミン誘導体とTLR9の相互作用からTLR9のヘモゾインによる活性化の機構を解明する。 平成27年度は研究実施計画に従い、(1)ヘミン含有ポリマーの作成、(2)ヒトTLR9とヘミンとの相互作用の解析を行った。(1)においては、C=C 二重結合を有するモノマー分子とヘミンを混合し、ラジカル重合反応によりヘミン含有ポリマーを合成した。合成したポリマーの免疫活性化能を免疫細胞を含むヒト末梢血単核細胞を用いて評価した。ヒト末梢血単核細胞に合成したヘミン含有ポリマーを添加し、各種サイトカインの分泌量をELISA法により調べた結果、合成したポリマーの一つがヒト末梢血単核細胞においてインターフェロンガンマの発現を誘導した。インターフェロンガンマは免疫活性化刺激を受けたNK細胞やT細胞から産出されることから、ヘミン含有ポリマーが免疫活性化能を有することが示された。 (2)においては、トール様受容体9発現HEK293細胞と未発現293細胞を用いて、ヘミン含有ポリマーによる転写因子NFκBの活性化をレポーターアッセイにおいて解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画に従い研究を進め、成果も得られていることからおおむね順調に進展していると判断する。実施計画においては、表面プラズモン共鳴分光法を用いたTLE9とヘミンとの相互作用の定量解析を予定していたが、こちらについては新装置(Biacore X100)を平成27年度に導入し、動物細胞に発現させたトール様受容体9を精製し、センターチップに固定することで、申請者らが新しく合成した水溶性ヘミン誘導体であるPEGヘミンに対する解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
表面プラズモン共鳴分光法を用いたトール様受容体9(TLR9)とヘミンとの相互作用の定量解析では、現在用いている水溶性ヘミン誘導体であるPEGヘミン以外にも本研究で合成したヘミン含有ポリマーに対する相互作用解析を進め、ポリマーの種類や分子量によるTLR9のヘミン認識能の違いを明らかとすることで、免疫活性化を効果的に行うヘミン含有ポリマーを設計する。また、野生型のTLR9に加えて、リガンド認識部位に変異導入したTLR9変異体を用いることで、TLR9のヘミン認識部位を明らかとする。この結果、我々の体内でヘミン結晶体であるヘモゾインがどのようにTLR9に認識され免疫活性化が行われているかを明らかとする。 また、合成したヘミン含有ポリマーが臨床応用できる特性を有することを示すために、(1)血清中での安定性の評価、(2)免疫細胞への取り込み評価を行う。具体的には(1)についてはヘム由来の400nmの吸収ピークを利用して安定性を評価する。(2)については、蛍光標識ヘミン含有ポリマーを合成し、細胞への取り込みを共焦点蛍光顕微鏡、フローアナリシスシステムを用いて評価する。
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Causes of Carryover |
本研究を申請するあたり、前実験を十分に進めてきた。前実験の際に購入した試薬類を利用したために、初年度の試薬代、消耗品代が当初の予定額から大きく下回った。また、予算を大きく確保してあったSPRを用いたTLE9とヘミンとの相互作用の定量解析について、平成27年度は条件検討が中心であったため、当初予定のセンサーチップの使用量を下回ったため、平成27年度の物品費の使用額が減少した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度分として請求した助成金(1,300千円)と併せて、研究業務員1名分の人件費として1,000千円、SPR用センサーチップの購入費用として400千円、そのほか物品代(試薬代、消耗品代)として600千円、学会発表のための旅費として200千円を使用する。
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Research Products
(6 results)