2016 Fiscal Year Research-status Report
帯電現象を考慮したスペースデブリの軌道・観測・低減に関する総合的研究
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15K06600
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山川 宏 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (50260013)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スペースデブリ / レーダ / 軌道 / デブリ除去 / 帯電 |
Outline of Annual Research Achievements |
地上からのスペースデブリの観測に向けて、まず、京都大学MUレーダを用いた際の高度に依存したデブリの観測性能を推定した。そのうえで、実際のスペースデブリの観測を実施し、まずは、MUレーダによるデブリエコーの取得が可能であることを示した。さらに、数m程度の大型スペースデブリの軌道決定精度が、次の周回のデブリも観測可能である程度に十分得られることを確認した。また、単一レンジドップラー干渉計法、および、エコー強度法を用いたスピン・形状推定手法の検討を実施したうえで、実際のデブリ観測データから、スピン状態の推定可能性、形状の推定可能性について検討を行った。 軌道上からのスペースデブリの観測に向けて、10㎝程度の小型スペースデブリの観測に適した軌道上に配置された光学センサの概念設計を行うことで、軌道上からの既知デブリの観測可能性について検討を実施した。 スペースデブリの長期的な軌道推移モデルの解明を目指して、従来考慮されてこなかった帯電現象が微小スペースデブリの軌道推移に与える影響に着目をして検討を実施した。具体的には、従来から考慮されている地球・月・太陽重力、地球の高次重力項、大気抵抗、太陽光圧に加えて、地球磁場による力、対流電場による力、共回転電場による力の影響評価を行った。半径が1~1000ミクロンの微小デブリを対象とし、数値計算シミュレーションを用いて三次元運動方程式を解くことで、地球周回軌道要素、特に、高度低下に対する基本的な影響を明らかにした。 デブリの衝突危険の回避に向けて、デブリに装着した小型のビームエミッタによる帯電量制御を通して、軌道高度の低下の可能性について検討を行った。帯電量のオンオフを制御することにより、スペースデブリの広範囲の初期軌道から、最終的に大気圏内に落下させることが可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の計画に沿って、1)地球周辺電磁場の帯電微小デブリの軌道への影響評価については、従来から考慮されている地球・月・太陽重力、地球の高次重力項、大気抵抗、太陽光圧に加えて、地球磁場による力、対流電場による力、共回転電場による力の影響評価を行い、2)人工衛星搭載光学センサによるデブリの観測システムの検討については、10㎝程度の小型スペースデブリの観測に適した軌道上に配置された光学センサの概念設計を行うことで、軌道上からの既知デブリの観測可能性について検討を実施し、3)デブリの積極的帯電による軌道高度低下を通した除去の可能性の検討については、帯電量のオンオフを制御することにより、スペースデブリの広範囲の初期軌道から、最終的に大気圏内に落下させることが可能であることを示し、さらに、4)地上レーダを用いた、数m程度の大型スペースデブリの軌道決定精度が、次の周回のデブリも観測可能である程度に十分得られることを確認し、単一レンジドップラー干渉計法、および、エコー強度法を用いたスピン・形状推定手法の検討を実施した。従って、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
1)地球電磁場の帯電微小デブリの軌道への影響評価に関しては、整備した軌道進化計算用のシミュレーションプログラムを用いて、長期的な軌道進化予測を実施し、観測が不可能な微小デブリの存在領域の推定をしつつ、デブリの軌道モデルを構築することを目標とする。2)地上レーダを用いたデブリの形状、スピン状態推定の概念検討に関しては、単一レンジドップラー干渉計法、および、エコー強度法の双方の長所を組み合わせることで、よりスピン・形状推定手法の精度の向上を目指す。3)地上レーダを用いたデブリの軌道推定手法に関しては、軌道要素が既知のデブリの観測を通して、MUレーダの観測パラメタの最適化とともに、軌道推定アルゴリズムの高度化を目指す。また、1000km以下の低高度のデブリのみならず、静止軌道近くまでのデブリ観測の可能性について検討する。さらに、MUレーダの観測モードを工夫することで、未知のデブリの観測可能性について検討することを目指す。
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Causes of Carryover |
研究打合せのための出張が年度末にキャンセルされたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
旅費の一部として使用する計画である。
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Research Products
(6 results)