2015 Fiscal Year Research-status Report
複数のGNSSアンテナによる超高精度測位法と応用技術の開発
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15K06609
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
杉本 末雄 立命館大学, 理工学部, 教授 (70093424)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 幸弘 立命館大学, 理工学部, 教授 (00388125)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | GNSS測位法 / 精密単独測位 / PPP / 超精密単独測位 / VPPP / 拘束条件付推定問題 / カルマンフィルタ / GNSSジャイロ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,複数のGNSSアンテナを用いた超精密なGNSS測位アルゴリズムを開発することである.このために,GNSS回帰モデルを用いて,(テーマ1)複数のGNSSアンテナ(Multiple GNSS Antennas)による,超精密単独測位(Very Precise Point Positioning: VPPP)アルゴリズムの確立と,同時に(テーマ2)複数アンテナを活用する,GNSSジャイロの理論(すなわちアンテナ間の基線ベクトルを精密に推定することにより,オイラー角である,ヨー, ピッチ, ロール角を高精度に推定するための理論)の確立と具体的な計算処理アルゴリズムの開発を行うことにある. (テーマ1)に関しては,従来から開発している,2受信機に対して各々精密単独測位(PPP)アルゴリズムを適用し測位を行い,2アンテナ間の距離が既知であるという条件を用いて,拘束条件下での状態推定問題をカルマンフィルタにより解く測位アルゴリズムを,当初計画していた.しかし,今年度での大きな研究成果は,上記の考え方を発展させ,GNSS測位データの受信機間・衛星間での2重差データを用いることにより(この方法は,従来,相対測位法としては,一方のアンテナ位置は既知として利用されていた)ほとんどの誤差要因が消滅することから,すべてのアンテナ位置が未知であるとの条件で,当初の測位法と同じく,アンテナ間の距離の拘束条件を用いる,外部からの補正情報を全く必要としない新たなVPPPアルゴリズムを導出した.現時点では,1分間(60 epochs)1周波のGPS測位データで,RMS誤差(Root Mean Square Error)80㎝を達成している.この研究成果については,現在システム制御情報学会論文集に英文で投稿中である.また(テーマ2)については,(テーマ1)の研究成果を利用して,(各々の推定された位置ベクトルの差をとらず)2アンテナ間の基線ベクトルを未知ベクトルとして,直接求める推定アルゴリズムを導出している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(テーマ1)複数アンテナを用いたVPPPアルゴリズムの確立,(テーマ2)複数アンテナを活用するGNSS精密測位技術の開発については全体的に,おおむね順調に進展しているといえるが,(テーマ1)については,従来,相対測位法として,基準局の位置は既知(known),ローバー側の位置は未知(unknown)であるという仮定のもと利用されていた,GNSS観測データに対して,受信機間,衛星間についての2重差データを利用することによる新しいVPPP法を見出したことは,当初の計画以上に進展していると考えられる.また,(1)精密単独測位(PPP)に関する研究成果を発展させ,複数アンテナ(受信機)を利用したPPPの基礎理論の確立および基礎的なアルゴリズムの導出を行う.(2)複数のアンテナを利用する理論として,独立したアンテナ・受信機の組合せを複数台活用する方法と,受信機時計誤差が同じである,アンテナ複数台に対して受信機を1台とする方法が考えられるたが,GNSS観測データに対する受信機間,衛星間の2重差を用いることにより,必ずしも,複数受信機の厳密な時刻同期が必要でないという結論が導かれようとしている点は,VPPP法のための受信機時刻の厳密な同期を必要としない点で、受信機構造を簡単化でき、当初予定した計画以上に進展しているものと考えられる.また,(テーマ2)については,(テーマ2)のVPPP測位法の精度に依存しているが,各アンテナの位置をPPPにより精密に求め,その位置ベクトルの差をとる方法よりも,基線ベクトルを直接の未知ベクトルとして推定できる方法を見出したことは大きな成果である.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度では,(テーマ1)については,測位データのアンテナ間,衛星間での測位データの2重差を考えることにより,ほとんどのGNSS測位のための誤差要因を消滅させ,かつアンテナ間の距離が既知との拘束条件を用いて,2受信機,3受信機,4受信機など多数のアンテナの測位精度の向上を図った. しかし測位精度的には,外部からの補正情報を全く用いていない状況下としても,1分間(60 epochs)の1周波のGPS測位データにより,RMS誤差80㎝は,まだまだ不十分な測位精度と考えられる.より高精度な距離拘束をもつアンテナ位置の測位を達成するために,現時点で最もネックであると考えられる点は,(Q1)衛星位置の推定精度の向上,(Q2)二重差の整数値バイアスの推定手法の確立,が考えられる.また,受信機時計の時刻同期は本当に高精度測位のためには必要か?という点についても従来の相対測位アルゴリズムから,必ずしも,高精度な受信機時計の時刻同期が必要ではないとも考えられるが,その観点についての検討および検証が重要と考えられる.また(テーマ2)については(テーマ1)でのVPPPが達成されれば,オイラー角の推定問題は精度が上昇することは明らかである,したがって,前年度に2アンテナ間の基線ベクトルを(各々の推定された位置ベクトルの差から求めず)直接求める推定アルゴリズムの導出を行ったが,今年度は,多数の同一平面上に配置されたアンテナからの測位データを用いて,最小二乗法に基づく,各アンテナ間の基線ベクトルからオイラー角を求めるアルゴリズムの導出を行う.
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Research Products
(15 results)