2017 Fiscal Year Research-status Report
舶用2ストロークディーゼル主機関の運転特性に及ぼす負荷変動の影響
Project/Area Number |
15K06616
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
塚本 達郎 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (50207346)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 秀次 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (00554958)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 舶用ディーゼル機関 / 排ガス計測 / 窒素酸化物 / 粒子状物質 / 負荷変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度(平成29年度)は,供試機関である舶用2ストローク低速ディーゼル機関において,機関負荷率を舶用負荷特性(プロペラ負荷特性)に従って定常負荷状態の25, 50, 75, 100 %に設定し,主にNOx排出率,燃料消費率,排気弁動作タイミングと筒内圧力,燃料噴射圧力を計測した.また,各負荷率の機関回転速度において負荷(トルク)が低下した状態の計測を実施し,機関出力,燃料消費率等とNOx排出率の関係を把握するNOx排出率マップを作成した.研究に使用した供試機関は,燃料噴射開始タイミングと噴射率,排気弁開閉動作が電子制御されている.同一の機関回転速度において,負荷が低下した場合に排気弁動作,燃料噴射状況は自動的に変化する.本計測では機関標準状態(メーカーから出荷されたセッティング)において計測を実施しているが,低回転速度(舶用特性の負荷率25 %の回転速度)においては低負荷であるほど,排気弁閉タイミングが早くなり圧縮圧力を高める制御となり,着火性を重視した制御であると考えられる.低負荷では着火遅れによる最高圧力の上昇や,排気弁タイミング制御によって,負荷が低下したにもかかわらず,NOx排出率が上昇する傾向が確認された.舶用特性の負荷率50 %の回転速度では,過給機が回転することで掃気圧力も高くなり,その結果圧縮圧力が上昇し,着火遅れが短くなる.そのため,低回転速度時のNOx排出率と比較して,排出率は大きく低下するが,低負荷であるほどNOx排出率が高くなる傾向がある.舶用特性の負荷率75 %以上の回転速度では,負荷の違いによって若干の差はあるものの,NOx排出率には大きな差がないことがわかった.燃料消費率とNOx排出率の関係は,同一回転速度において負荷が変化した場合には,燃料消費率が低いほどNOx排出率が高くなるトレードオフの関係が確認されたが,回転速度が異なる場合にはトレードオフの関係が成り立たないことがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の実施計画と進捗状況から,やや遅れていると判断する.遅れている項目として,粒子状物質計測の一部が完了していないことと,負荷変動運転状態における検討の一部が未実施である.遅れを生じた理由としては,本研究における供試機関は研究実績の概要で記載した通り,電子制御機関であり,燃料噴射開始のタイミングだけではなく,同一の回転速度においても排気弁の開閉タイミング,初期燃料噴射率とメイン燃料噴射率,燃料噴射開始タイミングが制御によって変化する特性を把握するのに時間を要したためである.なお,今年度(平成29年度)において,制御の状態は把握できていると判断していることから,次年度(平成30年度)においては,粒子状物質の計測とともに,負荷変動状態の計測を順調に開始することができると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要と現在までの進捗状況で報告した通り,実施計画に対して若干の遅れが生じており,延長の申請を行った.次年度(平成30年度)は,最初に定常負荷状態の粒子状物質の計測およびNOx排出率の計測を実施し,今年度把握した,NOx排出率と燃料消費率の関係に追加して,粒子状物質の排出濃度・排出率とNOx排出率の関係を明らかにする予定である.粒子状物質の計測は,変化を確認する代表的な運転点においては,JIS B8008によるPM濃度の計測,その他の運転点においては,光反射式のスモーク濃度(FSN)や光透過式のスモーク濃度(オパシティ)を用いることで,研究の推進を加速する予定である.上記のNOx排出率,燃料消費率,粒子状物質の排出に関して把握した上で,負荷変動状態におけるNOx排出率の計測を行い,定常負荷状態のNOx排出率との差異を把握し,国際海事機関のテクニカルコードによって実施される機関台上計測・海上公試と,実際の航海状態における排出率の違い,船舶の長期間の運航に伴う船体抵抗上昇時のNOx排出率に変化等の考察を実施する予定である.
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Causes of Carryover |
粒子状物質計測の一部が完了していないことと,負荷変動運転状態における検討の一部が未実施であることなど,研究計画から遅れており.これらの実験実施にかかる費用が未使用となっている.主として,機関運転に必要な燃料,潤滑油などの消耗品,粒子状物質計測に必要なろ紙などの消耗品,ガス濃度計測に必要な標準ガスの購入等に使用する予定である.
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