2015 Fiscal Year Research-status Report
フォノニック結晶構造を用いた小型軽量音響レンズとクローキング材料の開発
Project/Area Number |
15K06624
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
土屋 健伸 神奈川大学, 工学部, 准教授 (50291745)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 信行 神奈川大学, 工学部, 教授 (20016801)
穴田 哲夫 神奈川大学, 工学部, 教授 (20260987)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フォノニック結晶構造 / 音響レンズ / 平面レンズ / 菱形レンズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は,フォノニック結晶構造を用いた音響レンズとクローキング材で海洋中の画像取得装置の性能を向上させることにある.水中の探査用に搭載されている音響カメラに用いられる音響レンズは凹面形状がほとんどである.しかし,フォノニック結晶構造を用いることでレンズ形状を自由化できるために音響カメラ装置の小型化・軽量化が可能となる.さらに無反射材に相当するフォノニック結晶構造を用いたクローキング材を使用することで不要な音を消し去ることができ,カメラ装置の性能をさらに向上させる可能性を秘めている.フォノニック結晶構造を用いた音響レンズとクローキング材の試作品を作成して,その音響特性を明らかにする. まず,フォノニック結晶構造パラメータと集束音場の関連を明らかにし,低減衰で小型・軽量な音響レンズを設計する方法を開発する.フォノニック結晶構造体は棒状の物体が周期的に配置された構造を有している.海洋で用いる音響レンズの実用化に当たっては大きさと重量の問題点があることから,フォノニック結晶構造と集束音場との関連を明らかにし,フォノニック結晶構造配置を設計するアルゴリズムの開発を行った.さらに,従来の研究で平面型と菱形の音響レンズを設計・試作した経験から,レンズ形状の最適化を行った. 初期のフォノニック結晶による音響レンズの形状は平面型であったが,音波の有効開口径が小さかった.そこで,菱形形状の音響レンズを設計して,その集束音場特性を数値解析した.さらに周期構造体である真鍮棒の間隙物質を水からシリコンゴムに変えることで多様な状況に対応できる音響レンズを設計した. 一方,クローキング材に関しては,反射率を軽減できたが,まだ物体をクロークできるまで達していない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フォノニック結晶構造による音響レンズに関しては,さまざまな形状に対応できるようにまず菱形形状に関して検討した.一方,クローキング材に関しては,反射率を軽減できたが,まだ物体をクロークキングできるまで達していない.構造パラメータとして,材質および構造体の配置に関して検討を行った. まず,菱形の音響レンズで集束音場を形成できることを示すため,平面構造体への入射角度を変化させて,周波数範囲を700kHz~800kHzの間で音波が屈折することを確認した.そして,構造体のパラメータで屈折率が変化することを確認した.次に,外形状が菱形のフォノニック結晶構造音響レンズを設計した.設計には数値解析法の一種である時間領域有限差分法(FDTD法)を用いた.従来の平面型フォノニック結晶構造音響レンズでは,点音源からの音波のみ集束できていたが,形状を菱形にすることで平面波が入射した場合でも音波が集束することを確認した.入射音波の周波数を変化させることで集束音場の変化を確認し,設計通り周波数範囲を700kHz~800kHzの間で音波が集束することを確認した. クローキング材に関しては,反射率を軽減できたが,まだ物体をクロークキングできるまで達していない.構造パラメータとして,材質および構造体の配置に関して検討を行い,構造体を音波が透過する条件を数値解析した.表層での反射率は,ほぼゼロとなったが,深部の外郭部での反射が生じて完全なクローキング状態には達していない.しかしながら,音波の伝搬路変更(誘導)には成功しており,完全なクローキング状態への検討を続けている.
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Strategy for Future Research Activity |
小型で軽量,かつ,フレキシブルな音響レンズの完成のために,平面型および菱形の音響レンズについては今年度で設計の目処がついた.次に試作モデルを作成して集束音場の測定を行い設計通りの性能を有するか確認を行う.設計上,周波数範囲が700kHz~800kHzの間で音波が集束することが分かっているので,その2倍の周波数範囲である600kHz~900kHzの間で音場測定を行うことを計画している.試作モデルは菱形音響レンズを採用する予定である.音場測定後,数値解析の結果と比較して設計通りの性能が得られているか確認を行う.さらに,特徴的な差異が表れた場合,その原因を追求していく. クローキング材に関しては,反射率を更に低減させるフォノニック結晶構造の格子パラメータを求める.また,格子間隔を緩やかに変化させることで音波に伝搬誘導が可能となったので,全方位からの音波のクローキングを目指す.さらに,クローキング材の設計の中で得た音波伝搬誘導の知識を用いて音響レンズのフレキシブル化を進める予定である.
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Causes of Carryover |
本年度の計画進行によってはアルバイトを雇って実験補助を依頼する予定が変更になったため,当初に計画した人件費および謝金を使用しなかったため.他は概ね予定通り執行している.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度以降は,計画進行に伴いアルバイトを雇って実験補助を依頼する予定である.必要に応じて,期間を限定した複数人の雇用も予定している.
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Research Products
(9 results)