回転状スロッシングを利用した矩形タンク内衝撃荷重軽減技術に関する研究

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K06626
• Research Institution: National Institute of Maritime, Port and Aviation Technology
• Principal Investigator: 安藤 孝弘 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 主任研究員 (30425756)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 岡 正義 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, グループ長 (70450674)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: 船舶工学 / スロッシング / 低減手法 / LNGタンク / LNG燃料船

Outline of Annual Research Achievements

1.簡易動揺試験及び三次元タンク模型の製作
スワーリング励起因子を抽出するため、H27年度に製作した簡易動揺装置及び小型矩形タンク模型を使用した手動加振試験（簡易動揺試験）を前年度に引き続き実施し、スワーリングが発生するタンク形状や加振周期範囲等についての観察を実施した。小型矩形タンク模型内に複数のスペーサーを挿入しタンク長さを変更することで、タンク長さとタンク幅の比率を4種類（L/B:1.5,1.33,1.25,1.17）に変更し、液位についてはタンク長さ:Lを変更する影響を考慮し液位:Hとタンク長さ:Lの比としてH/L：20%、40%の2種類を設定した。また加振条件は本研究の進捗状況を考慮し並進運動のみに絞ることとした。簡易動揺試験の結果として、スワーリングは液位H/L:20%ではL/B:1.33以下で、液位H/L:40%ではL/B:1.25以下で発生し、更にタンクコーナー部に三角形のスペーサーを設置した際に、スワーリングを励起しやすい傾向を確認した。これらを踏まえ衝撃圧力計測用の三次元タンク模型をL/B:1.33に設定し製作した。
2.特許出願準備
上記簡易動揺試験の横揺れ(ROLL)加振時の知見として、タンク内の液体が高速で旋回する際にタンク模型を搭載した動揺台の横揺れが比較的早く収束する傾向にあることを確認した。これを検証するため、円筒容器中の水が容器内壁に沿って高速に旋回する機能を有した簡易模型を製作し、上記動揺台に搭載した状態で旋回流れの流速を変化させた場合の動揺台の減衰特性について確認したところ、旋回流れが高速であるほど横揺れが早く収束することが分かった。またこの簡易模型を大型水槽に浮かべ外乱を与えた場合についても、旋回流れが浮体の姿勢安定に寄与することを確認した。これらの知見を発展させて、船舶や浮体式海洋構造物等に適用可能な減揺装置の特許出願準備を進めた。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

簡易動揺装置を使用した動揺試験の加振方法として、事前の試験計画のとおり並進運動（SWAY）及び横揺れ運動（ROLL）の二種類の加振を実施した。試験は両運動とも液位と加振周期をパラメータとして実施したが、横揺れの場合には回転軸の位置（高さ）により、上記試験条件が同じ場合でもタンク内部の液体の挙動が異なること、また上記動揺試験試験が手動の簡易試験であり、ある程度のバラつきを許容する必要があることなどから、各試験条件に対するタンク内の液体の挙動を明確にすることが困難であった。この横揺れ時の動揺試験をある程度網羅的に実施したために時間を要した。また上記試験中に得た特許出願につながる事象について、検証用の簡易模型の製作や検証試験の実施等、当初の研究計画には含まれない作業に時間を費やしたため、進捗としては申請時の計画から２カ月ほど遅れている。

Strategy for Future Research Activity

申請時の計画よりも遅れているため、まずは今後実施する三次元タンク模型を使用した強制動揺試験について、試験条件を絞って実施する。
加振運動は簡易動揺試験で検証できた並進運動（SWAY）のみとし、液位は低液位（H/L:20%)及び中液位（H/L:40%、H：液位、L：タンク長）の2種類、タンク形状の変更6種類程度として、スワーリング発生前後における衝撃圧力の変化を調査し、タンク形状やスワーリングの励起によるタンク内衝撃圧低減効果を検証する。また申請時の計画で実施予定であった数値解析は行わず、実験での検証に注力する。
他方、特許出願準備中のARTについては更に詳細な検証が必要となるため、新たに液位や内部を可視化可能なアクリル製円環タンク模型を製作し、H27年度に製作した簡易動揺装置を用いて、液位や流量等をパラメーターとする減揺効果について確認試験を実施する。この試験結果を精査し特許出願を図る。

Causes of Carryover

物品費としては、三次元タンク模型、スペーサー及び消耗品に計画通りの支出を行った。一方、計画時に予定していた圧力センサについては、弊所所有の圧力センサの使用が可能となったために残額が生じた。また予定していた学会出席等による情報収集については、本件に関係する学会発表等が発生しなかったために使用していない。

Expenditure Plan for Carryover Budget

繰り越した基金については、主に当初の計画時には無かった特許出願用の検証試験模型製作や試験の実施に必要な消耗品類の購入に充てる予定である。