2015 Fiscal Year Research-status Report
造船用ミリオーダー接着層厚の鋼/CFRP構造接着継手の長期信頼性評価法の構築
Project/Area Number |
15K06629
|
Research Institution | National Maritime Research Institute |
Principal Investigator |
岩田 知明 国立研究開発法人 海上技術安全研究所, 構造基盤技術系, 基盤技術研究グループ長 (50358397)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 構造用接着剤 / 異種材接合 / 造船 / ミリオーダー接着層厚 / 引張せん断強度 / CFRP / 鋼 |
Outline of Annual Research Achievements |
被着体対象品の規則要件としての難燃性向上の必要性に関して調査したところ、火災試験方法の適用に関する国際コード要件のうちの表面燃焼性試験の適用を受けない構造・艤装品は多数存在し、仮に本研究で取り扱う対象としては船舶防火構造規則で規定される材料は除いた接合箇所に限定するとしても、十分な量の用途範囲があることが判明した。そこで、限られた研究予算を効果的に活用するため、本研究の最も重要な部分である高温高湿劣化促進試験を充実させ、難燃性向上に関する開発は行わないこととした。 可使時間の延長に関しては、3種類の候補接着剤のうち、市販品の2種類は、常温(23℃)での可使時間20分以上の硬化剤が既に販売されており、30分以上への延長が望ましいものの、最低限の可使時間は満たしており、そのまま評価対象候補接着剤とした。 本研究で次年度に予定されている高温高湿劣化促進試験において、評価対象となる候補接着剤の抽出と表面処理の影響評価に関しては、接着剤メーカーが推奨する接着剤と表面処理を選定する予定であった。しかし、造船用ミリオーダー接着層厚での強度データが無いため接着剤メーカー側で絞り込めず、3種類の候補接着剤(C:金属への接着力が高い、N:金属及び樹脂への接着性が良い、S:厚膜でも樹脂への接着性が良い)に対して、強度評価試験により選別する必要が生じた。接着層厚が1mmと3mmの場合の引張せん断強度試験を、本数に関してはJIS規格に従い5本ずつ実施し、最大引張せん断強度、凝集破壊率など界面の破壊形態、伸びについて評価した。その結果、NとSがCFRP被着面側でほとんど界面破壊となったのに対して、Cの界面破壊率は40%~5%で、その結果として、最大引張せん断強度と伸びはCが最も大きくなったためCをミリオーダー接着層用として最も適切な接着剤に選定し、次年度高温高湿劣化促進試験を行うこととした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では、平成27年度は、鋼-CFRP異種材接合に対応した造船向けミリオーダー接着層用に適した構造用接着剤を抽出し、被着体の表面処理が引張せん断強度に及ぼす影響を評価すると共に、火災試験コードなどの規則要件に適合させるための難燃性向上に関する接着剤の改良や、作業性向上のための可使時間の延長に関する硬化剤の開発を実施する予定であった。 難燃性向上に関しては、船舶と設備に関する基準作成や検査を扱う日本海事協会の確認を取りつつ、造船所の意向を調査したところ、火災試験方法の適用に関する国際コード要件のうちの表面燃焼性試験の適用を受けない構造・艤装品は多数存在し、仮に本研究で取り扱う対象としては船舶防火構造規則で規定される材料は除いた接合箇所に限定するとしても、十分な量の用途範囲があることが判明した。そこで、限られた研究予算を効果的に活用するため、本研究の最も重要な部分である高温高湿劣化促進試験を充実させ、難燃性向上に関する開発は行わないこととした。ただし、研究代表者の科研費以外の研究費にて、候補接着剤のうちの1種類が、被着体としてアルミ艤装品を想定した国際コード準用要件で、表面燃焼試験に適合していることは確認した。 可使時間の延長に関しては、3種類の候補接着剤のうち、市販品の2種類は、常温(23℃)での可使時間20分以上の硬化剤が既に販売されており、30分以上への延長が望ましいものの、最低限の可使時間は満たしている。一方、メーカー開発中の1種類は、常温(23℃)での可使時間15分、35℃での可使時間が10分で、主に夏場において十分な作業時間が確保できないことが明らかとなった。そこで、研究代表者の科研費以外の研究費にて、開発中の1種類に対して改良検討を行い、35℃での可使時間が15分を超えるものを開発した。 候補接着剤の抽出と表面処理の影響評価の進捗に関しては研究実績の概要に記載。
|
Strategy for Future Research Activity |
申請時の計画通り、次年度は、平成27年度に選定した接着剤に対して、高温高湿劣化促進試験を実施し、アイリングモデルによる評価を行う。船舶海洋工学会などで発表を行う。最終年度は、湿潤・乾燥繰り返し試験により強度回復率関係曲線を導出してアイリングモデルによる加速寿命予測式を補正すると共に、高温・高湿劣化係数を用いた長期接着強度予測式の考案・検証を行う。構造接着国際会議や国内誌などで発表を行う。
|
Causes of Carryover |
交付予定の総額は申請額の76%となったが、2年目となる平成28年度に予定している高温高湿劣化促進試験が本研究の最も重要な部分のため、予算はできるだけ確保する必要があり、初年度である平成27年度の予算は可能な限り節約する必要がある。申請時には造船規則要件を満たすために接着剤と硬化剤の改良開発に費用がかかると想定していたが、「現在までの進捗状況」に記載したとおり、本研究で対象とする接合箇所の対象範囲を見直して難燃性向上に関する開発は行わないこととし、また、可使時間延長は研究代表者の科研費以外の研究費にて賄ったため、節約することができた。一方で、接着剤選定のための引張せん断試験用試験片製作は、申請段階では予算をほとんど計上していなかったが、試験片の被着体としてのCFRP板を、研究代表者の組織が所有する、装置・材料を用いて内作し、試験片製作に必要な材料費を抑制して強度試験を実施した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記節約により生じた次年度使用額を用いて、高温高湿劣化促進試験は当初計画通りに実施する。また、予算に余裕が生じた場合には、信頼性を高めるため試験片の本数を当初計画より増やし、環境劣化促進試験において経過時間の種類を増やすなど実施範囲を当初計画より充実させて行う。
|