2016 Fiscal Year Research-status Report
非正準Hamilton力学理論に基づく3次元MHD平衡コード開発とその物理応用
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15K06647
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
古川 勝 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80360428)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | プラズマ・核融合 / ハミルトン系 / カシミール不変量 / 磁気流体力学(MHD) / 定常状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
トカマク型に代表される軸対称トーラスプラズマは,現実には完全に軸対称ではない.近年,この非軸対称性がもたらす磁場構造の変化(例えば磁力線のカオス化)の閉じ込め性能への影響評価が重要課題となっている.この定量的分析には3次元的なプラズマ平衡が必須だが,その計算には難点がある.本研究課題では,非正準ハミルトン力学理論を応用した新解法による3次元磁気流体力学(MHD)平衡計算コードを開発すること,また非正準性が生むカシミール不変量によって平衡を系統的に整理できる特長を活かし,カシミール不変量を制御パラメータとした磁場構造変化の分岐図・相図を作成し,その物理を明らかにすることを目的としている. 平成28年度には,これまでに開発した2次元簡約化MHDのコードを3次元に拡張した.物理的な発展方程式を基に構成する人工的な運動により,カシミール不変量を保持したままエネルギーを減少させ,定常状態に至らせるものであり,その時間発展にはシンプレクティックかつ時間反転対称な陰的ルンゲ-クッタ法を用いて数値安定性を向上させている.この数値積分法の実装には,MHDよりはずっと単純だが同じくハミルトン系である荷電粒子運動や磁力線追跡における数値積分法の研究が役立った. 開発したコードを用い,円柱対称な平衡がテアリングモード不安定な場合には,人工的な運動の結果エネルギーがより低い状態として磁気島のある平衡が得られることを示した.この成果は,ヴァレンナ-ローザンヌ核融合プラズマ理論国際ワークショップにて招待講演で発表し,Plasma and Controlled Fusion誌にも論文発表した.また,エネルギーを減少させていく過程について,いくつかのシミュレーション結果から分析し,日本物理学会等で成果発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3次元コードを用いて,カシミール不変量を系統的に変化させてシミュレーションし,その結果を物理的に解釈する予定であるが,コードの数値安定性の向上に時間を要し,平成28年度内には多くのシミュレーションをできなかったため.
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Strategy for Future Research Activity |
パラメータサーベイを進める.特に,円柱対称な平衡が安定な場合と不安定な場合の比較,およびプラズマ回転の効果について調べる.並行して,フルMHDコードの開発を進める.これには,微分形式に基づいた有限要素法を活用する予定である.
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Causes of Carryover |
本研究課題は平成27年10月に追加内定通知を受けたものである.平成27年度内の学会の多くは既に講演申込期限を過ぎていたり,他の研究内容で既に講演申込を行った後の状態であり,特に旅費については平成27年4月から課題に取り掛かるつもりで予定していた額よりは少ない使用額となっていた.平成28年度には,この平成27年度分からの繰越分も含め,学会発表を積極的に行ったが,まだ若干の未使用分が残った.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は,まず,平成29年3月から4月に掛けてシミュレーションを行った結果を日本流体力学会 中四国・九州支部 講演会にて発表する.また,アジア・環太平洋物理学会のプラズマ物理部門会議が9月に成都(中国)にて行われるので,そこで研究成果発表を行う.毎回参加している日本物理学会は,秋の分科会は他学会と合同でPlasma Conference 2017として開催されるので,そこでも研究成果発表を行う予定である.これらの研究成果は,査読付き論文誌に発表する予定である.
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