2016 Fiscal Year Research-status Report
放射線による高度水処理法への固相抽出併用効果の研究
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15K06674
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
熊谷 友多 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究員 (70455294)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 放射線利用 / 有機物分解 / 固相抽出 / ゼオライト |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はゼオライトによる固相抽出を併用した放射線分解反応が、どのような水溶性有機物に対して効果的であるかを調べるため、水中で溶存状態の異なる芳香族塩素化合物を用いて吸着剤存在下での放射線分解反応を比較した。具体的には、中性分子として溶存するクロロフェノール、アニオンとなるクロロ安息香酸、カチオンとなるクロロベンジルアミンについて、吸着挙動と放射線分解効率の比較を行った。固相抽出のための吸着剤には、前年度の結果を踏まえてSi/Al比率が240の高Si-MOR型ゼオライトを用いた。 吸着実験および照射実験を行った結果、中性分子のクロロフェノールでは顕著な吸着が観測され、放射線分解反応においても固相抽出による分解効率の増加が観測された。一方で、高Si-MOR型ゼオライトはアニオンとして溶存するクロロ安息香酸の吸着には優れず、放射線分解においても分解効率は水溶液と比較して低下することが分かった。これはアニオンとなることで親水性が高まり、疎水性相互作用による高Si-MOR型ゼオライトへのクロロ安息香酸の吸着が阻害されたためと考えられる。クロロベンジルアミンでは、低濃度でカチオン交換サイトとの相互作用と考えられる強い吸着が観測されたが、吸着容量は大きくなく、放射線分解効率の増加は確認されなかった。 これらの結果から、放射線照射により吸着剤に吸収されたエネルギーを効率よく分解反応に利用するためには、高い吸着能が必要であり、分解反応効率の向上には有機物のゼオライト中への濃縮が重要であることが明らかになった。そのため、疎水性相互作用による吸着となる高Si-MOR型ゼオライトでは、中性分子として溶存する有機物の放射線分解に対して効果的であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は疎水性ゼオライトへの固相抽出を併用した有機物の放射線分解反応では、濃縮効果が分解効率の向上の鍵であること明らかにするとともに、中性分子として溶存する水溶性有機物に対して効果的であることを明らかにした。また、ゼオライトの劣化評価のためのラマン分光測定系の整備も進み、来年度実施予定の共存物質の影響に関しても実験に着手していることから、研究計画と照らして現在のところ順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は溶液のpH条件や共存物質の影響を明らかにする。今年度の結果から、クロロフェノールのようにpH中性条件では水中に中性分子として溶存する物質でも、アルカリ条件ではアニオンとなるため分解効率の低下が推測される。また、炭酸イオンやリン酸イオンなど、環境中にありふれた無機イオンでも放射線分解反応は阻害されるが、このような共存物質を含む水ではゼオライトへの有機物の濃縮による分解効率の向上が期待される。このような溶液条件に対する依存性を検証し、どのような水質においてゼオライトによる固相抽出併用が効果的であるかを調べる。また、放射線下でのゼオライトの吸着剤として耐久性を評価するため、放射線による劣化について調査する。
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Causes of Carryover |
物品購入時に当初計画よりも安価に調達できたため、差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度助成金と合わせて、消耗品費および旅費として使用する。
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Research Products
(2 results)