2016 Fiscal Year Research-status Report
電流遮断法によるリチウムイオン二次電池の劣化早期診断システムの開発
Project/Area Number |
15K06681
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
仁科 辰夫 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (60172673)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 2段分布定数回路 / PSoC5マイコン / 合材電極内電子抵抗 / 合材電極内イオン抵抗 / リチウムイオン二次電池 / 電流遮断法 / 過電圧緩和 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、リチウムイオン二次電池(LiSB)の劣化・安全性評価に関して、定電流充放電の途中に電流遮断による休止期間を10分ほど設け、その休止期間中の電池電圧の過渡応答を解析することにより、電池の内部状態の変化や安全性を損なう欠陥が生じていないかを評価する技術の研究開発を行うことを目的としている。 劣化により新たに生じる0.2秒程度の時定数の内部抵抗要素が何に起因するか、小型電池を使用して電池の解体分析を併用して解析する。これを実施するためには、これまでの1段分布定数回路を仮定した等価回路では、正しい応答を得ているとは思えないため、解析結果には不可解な任意性があった。このため、本年度は電池系をより正確に表現する2段分布定数回路を等価回路とし、その基礎式を求め、得られた連立変微分方程式をラプラス変換による手法で解いた。その結果は、電解液側の応答は電解液のイオン抵抗と活物質側の等価容量の積による時定数、活物質側の応答は活物質側合材電極層の電子抵抗と活物質側の等価容量による時定数と電解液側の時定数の和によって決まることが分かり、電池応答は活物質側の電子抵抗が必然的に大きくなる正極側と、電子抵抗が小さい負極側の応答に分解でき、より精度の高い解析に世界で初めて成功した。 電気自動車(EV)への電池マネージメント技術につながる解析システムのハード、ソフト開発を行い、これを5Ah程度の中型電池に適用して、その妥当性を評価するテーマに関しては、実使用時に発生しうる高電圧パルスノイズの影響を上記技術で検証し、安全性への指針とする。これについては、上記結果から、解析システムとしては高S/N比が必要であることがわかり、A/D変換精度と速度に優れたPSoC5マイコンシステムをベースとしたシステムを開発する必要があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フィッティングでは、どんな過渡応答もフィッティングパラメータの数を増やせば、あてはめ精度は高くなる。しかしながら、結果として得られたパラメータの数値には物理的な意味は薄弱になる。このため、単純かつ正当な等価回路の選択とその解析解を求めることは必須であると考える。本年度は、これまでの単純な1段分布定数回路ではなく、電池特性を物理化学的により正確に表現するため、2段分布定数回路を設定し、その基礎方程式を求め、さらに解析解まで求めた。その結果は正極側の応答と負極側の応答で、合材電極層内の電子抵抗が違うことを世界で初めて実電池の過渡応答から分離決定することに成功し、電池内部の過電圧状況を高精度にその場解析できることが可能であることを明らかにした。 この成果は、実際の電池管理システム(BMS)への応用において、必要なA/D変換解像度が10bits程度では完全に不足し、12bits以上の解像度が必要であること、高S/N比がないとフィッティングによる高精度なパラメータの決定が解析関数の性質上から不可能になることが分かり、開発すべきBMSシステムの設計上、重要な指針を得た。この結果から、一般的なPICマイコン系では精度とS/N比が不足しており、PSoC5を基本とするシステム開発が必要であることが分かった。この点において、最適なシステム構築に対する無駄をなくすことができ、今後の研究開発の効率化に寄与するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
PSoC5を用いたシステム開発に長けている徳島文理大学の中山教授の技術指導のもとでBMSに適したBMS用装置の開発を行い、電流遮断法によるBMSシステムのベース測定系を完成させる。 統計的な基礎のもと、理論応答に対して正規分布ノイズを重畳したモデルデータを作成し、どの程度のS/N比があれば高精度解析が可能となるかを明らかにする。 これらの成果をもとに、0.2秒程度の第3の時定数系の出現起源について解析を進め、安全性をもとにした運転条件、寿命判定の原理的根拠を提示する。
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