2015 Fiscal Year Research-status Report
ガソリン直接導入で運転する固体酸化物燃料電池の、燃料極反応の解明と制御
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15K06691
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
佐々木 一哉 東海大学, 工学部, 准教授 (70631810)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 固体酸化物燃料電池 / ガソリン発電 / 硫黄被毒 / アノード電極 / 水蒸気改質 / 炭素析出 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初計画通り、アノード材料、改質方式および運転条件を系統的に組み合わせた検討を行い、下記の知見を得た。獲得知見は、水蒸気改質法によるガソリン発電の実現可能性を示し、平成28、29年度の研究の基礎となり、本研究の目的達成に寄与する成果であった。 1.クラッキング反応の解明: 水蒸気/炭素比(S/C)と運転温度を系統的に変化させ、条件毎のクラッキング反応生成物を解明した。オクタン(ガソリンの主成分)は完全に改質された。低温ではオクタンの熱分解により主にH2とCが生成し、高温ほど・CH3や・OHなどのラジカル等の中間体が関与する反応が促進された。さらに高温(>950℃)では中間体の加水分解が促進されてH2選択性が向上したが、CH4の熱分解の促進による炭素析出も増大した。生成物組成のS/C依存性は小さかった。 2.電極反応の解明: 熱力学計算による理論起電力、排ガス組成の変化および電気化学測定結果を総合的に検討し、発電時の電極反応を解明した。C、CH4あるいはC2H6ではなく、H2とCOのみが電気化学的に酸化(消費)された。H2とCOの生成が律速過程であった。 3.発電特性: オクタン発電を実証できた。律速過程を推定した。高電流密度での発電では、有効反応種(H2、CO)の反応場への供給が律速となった。S/Cを増やすと、水蒸気がオクタン供給を阻害し、起電力変動が増大した。 4.発電の安定性と炭素析出挙動の把握: S/C=1、950℃で連続発電ができた。炭素析出がわずかに生じた。 5.当初計画以上の成果: ガソリン発電で懸念されるアノードの硫黄被毒に対し、被毒防止と被毒電極の性能回復の方法を検討し、アノード電位を一時的にシフトする有効な方法を見出した。また、1-4項の獲得知見を活用する上で来年度に追加検討する代替アノード材料(Sr2MgMoO3-d粉末)について、経済的で簡便な合成法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の平成27年度研究計画は全て実施し、データを獲得できた。得られたデータを総合的に考察することで、SOFCのガソリン発電を水蒸気改質法で行う際の、燃料改質反応や電極上の発電反応について、詳細な理解に至った。 検討した電極材料と運転条件の中では炭素析出を完全に抑制するには至らなかったが、研究の主課題である炭素析出に関して、その発生の素過程を理解でき、かつ、炭素析出対策の明確な指針を獲得できた。すなわち、熱分解で生じるラジカル等の中間体を加水分解するための、高活性な触媒探索と十分な反応場を提供するアノード電極微細構造の構築が、ガソリン発電SOFCを水蒸気改質法で運転を可能にすると示された。 研究計画策定時の予定より多くの学生が配属されたことと彼らの精力的研究により、当初計画を超えた成果も得られた。まず、今年度の研究で必要性が示唆された高活性電極の研究にも着手できた。Sr2MgMoO3-dは平成28年度に検討することとなる有望な候補材料であるが、これまでは安定な品質の粉末を製造できる経済的かつ簡便な方法がなかった。そこで、本材料の合成方法を検討し、新たな製法の確立に成功した。また、本研究の成果として炭素析出を抑制できるならば、残される課題は硫黄被毒対策である。そこで、硫黄被毒対策も検討し、従来の研究報告にはなかった新たな対策の確立に至った。この硫黄対策技術は、本研究の背景にある移動体用動力としてのSOFCの小さな設置空間と既存燃料インフラの利用を考えると、有効である。 以上のごとく、平成27年度の研究では、当初の研究計画通りの進捗と成果に加え、その成果の上で実施する平成28年度の研究に資する先行知見も獲得し、さらに3年間の本研究で達成をめざすガソリン発電SOFCの実現上で将来的に残される課題への対策も確立した。したがって、「当初の計画以上に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、当初計画通りに、CO2を改質ガスとして使用する場合の基礎的知見の獲得に向けた研究を行う。研究実施上の装置などの研究環境や、実験条件制御などに関するノウハウは、平成27年度の研究で構築された。したがって、これらに準じた実験研究を行い、水蒸気改質運転に関する平成27年度の成果との比較が容易なデータとして取りまとめる。 一方で、平成27年度に示唆された水蒸気改質法の改善(触媒探索や電極微細構造制御に関する)を並行して実施する予定である。代替電極材料の候補であるSr2MgMoO3-d(SMM)に関しては、はじめに電解質材料との化学的両立性や導電特性などの基礎的検討を実施し、電極形成方法を確立後、最終的にアノード電極評価を行う。電極微細構造制御に関しては、Ni-YSZを評価対象とし、電極厚さや気孔率をはじめとする微細構造因子と炭素析出との相関を検討する予定である。 【平成28年度計画】 1.CO2改質に関する検討: (ア)熱力学計算による好適運転条件の推定。(イ)排ガス組成や電気化学評価に基づく燃料改質反応の把握。(ウ)発電試験による炭素析出挙動の把握。 2.触媒探索に関する検討: (ア)SMMと電解質との化学的両立性評価。(イ)SMMの導電特性評価と好適運転条件の推定。(ウ)SMM電極形成法の確立と電極特性評価。 3.電極微細構造に関する検討: (ア)電極厚さによる影響の解明。(イ)電極の多孔質性による影響の解明。(ウ)以上を総合した、電極微細構造の最適化による電極触媒反応の促進方法と効果の解明。
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[Presentation] Synthesis of Sr2MgMoO6 by Atmosphere-Controlled Calcination method and Characterization for Solid Oxide Fuel Cells2016
Author(s)
5.Masahiro Kinoshita, Kyota Hara, Tomohiro Onozawa, Kiyoto Shin-mura, Yu Otani, Tsuyoshi, Seiya Ogawa, Eiki Niwa, Takuya Hashimoto, and Kazuya Sasaki
Organizer
40th International Conference and Expo on Advanced Ceramics and Composites (ICACC-16)
Place of Presentation
Daytona Beach, Florida, USA
Year and Date
2016-01-24 – 2016-01-29
Int'l Joint Research
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