2016 Fiscal Year Research-status Report
極低温冷凍機の高性能・高効率化を目指した新しい蓄冷器構造の適応
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15K06693
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Research Institution | Oshima National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
増山 新二 大島商船高等専門学校, その他部局等, 教授 (00287591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沼澤 健則 国立研究開発法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他研究員 (30354319)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 極低温 / 小型冷凍機 / 蓄冷器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,超電導機器などの低温システムに必須な道具である極低温小型冷凍機の高性能化を目指し,エネルギーの利用効率を高めることである。目標達成のために,小型冷凍機に,独自に開発中である「等価的蓄冷器形状変化」の手法を適応し,その評価を行う。対象とする冷凍機は,普及している小型冷凍機の一つである,ギフォード・マクマホン(GM)冷凍機であり,4 Kレベルでの高効率を目指している。 冷凍機の効率に直接,影響を与える構成部品として,冷熱を蓄える「蓄冷器」が挙げられる。その蓄冷器は,一般的に断面が一定な円筒形状をしている。冷媒であるヘリウムガスや蓄冷器内に充填される蓄冷材の物性の温度依存性を考慮すると,その形状は必ずしも円筒形状の必要がないと考えられる。しかしながら,GM冷凍機は,ステンレス製の肉薄シリンダー内に蓄冷器が挿入され,それが室温部に設けられたモータと同期することで上下運動する構造となっている。したがって,蓄冷器形状を変化させると,それに伴う多数の部品の形状変化も余儀なくされる。そこで,蓄冷器内に,蓄冷に寄与しない断熱性の物質を挿入することで,等価的に蓄冷器形状を変化させる方法が考案された。 研究結果から,GM冷凍機の2段目蓄冷器の高温側を等価的に細くした場合,ヘリウムの液化温度である4.2 Kでの冷凍能力が改善できることが実証された。また,冷凍能力は2段目蓄冷器高温端温度に大きく依存することも見出された。一方で,低温側を細くした場合は,冷凍能力の低下が確認された。以上の研究成果から,冷凍能力を改善し,高性能な冷凍機を実現するために必要な蓄冷器特性の解明が進んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
等価的に蓄冷器形状を変化させる本手法は,蓄冷器内に蓄冷に寄与しない断熱性の物質を挿入するため,蓄冷器容積が減少する。従来の考え方では,蓄冷器容積の減少は,蓄冷器全体の熱容量の低下につながるため,冷凍性能の悪化を招くとされていた。しかしながら,本研究成果は,それを覆すものとなっている。この成果は,今後の高性能4 K冷凍機の開発につながるものであると考えられる。したがって,進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者が行っている4 Kレベルでの蓄冷器数値解析によると,蓄冷器内の温度分布が起因するヘリウムガスの物性変化のため,4 K冷凍機の冷凍性能が大きく影響を受けることが報告されている。そこで,今後の予定として,2段目蓄冷器の高温端温度を変化させることによる4 Kレベルへの冷凍性能の影響を,等価的形状変化を用いた場合と,用いない場合とで実験的に比較しながら調査する予定である。 本実験結果は,高性能な冷凍機を実現するために必要な蓄冷器特性の解明をさらに進展できるものであると考えている。
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Causes of Carryover |
冷凍機の冷媒に使用している高純度ヘリウムガスを消耗品として計上していたが,その消費が当初の予定より少なかった。このため残金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
高純度ヘリウムガスを購入する。
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