2015 Fiscal Year Research-status Report
シナプスレベルでのRgk1機能解析による記憶成分特異的神経子機構の解明
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15K06700
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村上 智史 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (10463902)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 記憶形成 / ショウジョウバエ / 嗅覚記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
Rgk1のputative GTPase domainに変異を導入したDominant-negative transgeneによるrescue実験を行った。その結果rgk1変異体の機能が回復しなかったことから、Rgk1のGTPase domainが記憶形成に重要であることが示唆される。 rgk1変異体における微小な神経構造変化を検出するために、single cell markingにより樹状突起と軸索部位それぞれの長さと形態を調べた。軸索についてはsynapse marker(synaptotagmin-HA)を用いることでシナプル数の計測も行った。その結果、rkg1変異体のキノコ体gamma神経において異常伸張と、シナプス数の増加が観察された。rgk1変異体では記憶形成能が低減するためこのシナプスの増加は一見して相反するが、記憶形成においてはシナプスのturn overが重要であることを考えると、rgk1変異体においてはこのサイクルに異常があり、本来消失すべきシナプスが除去されずに残っているという仮説が成り立つ。 rgk1変異体において、蛹期の腸における老廃物が異常集積していることが確認された。腸の収斂運動ではGPCR経路、cAMP経路等の関与が重要であり、rgk1が関与する分子機構を解明する上で一つの手がかりとなる。 キノコ体における遺伝子発現プロファイルの結果と、これまでに得られたrgk1に関する表現系(記憶形成異常の他、過剰発現体における羽の伸展異常、腸内老廃物の除去異常)をもとに、選択的な変異体スクリーニングを行い、rgk1と相互作用する遺伝子の探索を行った。これまでに68系統について記憶形成を調べた結果、G-protein, cAMP経路、長期記憶に関与する因子など5遺伝子について相互作用が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ドメインを欠いたrgk1 transgeneによるrescue実験などから、Rgk1はN末部位依存的にシナプスへ移動し、それが強固な記憶の形成に必要であることがこれまでにわかっている。本年度はこの知見を軸として、Rgk1が神経細胞内で果たす役割について、分子的側面(相互作用する因子)と形態的側面(樹状突起と軸索の構造とシナプス数)から解析を行った。その結果、rgk1がシナプスの形成に直接関与していることを示唆するデータや、GPCR経路、cAMP経路との関連が示唆され、rgk1の機能についてより理解を深めることができた。 一方で、キノコ体におけるrgk1のheterogeneousな分布様式を指標としたキノコ体を中心にした神経ネットーワークのクラス分けについては、これまでのところ確実な知見は得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
キノコ体におけるrgk1のheterogeneousな分布様式を指標としたキノコ体を中心にした神経ネットーワークのクラス分けについては、まずはGFPを用いて特定のキノコ体output神経がキノコ体と接続する部位をmarkingしているが、これまでにRgk1の分布に特徴が認められていない。markerの選定など戦略を修正する必要がある。 rgk1のシナプルへの移行が強固な記憶形成に必要であることがこれまでに分かっており、27年度の解析により、シナプスのturn overに関わるのではないかという仮説が浮上した。そこで今後の研究では、この仮説をサポートする実験を行う。具体的には、rgk1変異体が、異なる匂い記憶の保持に関してどのような性質を示すのかを明らかにする行動実験や、シナプス可塑性に関わる因子の異常がrgk1変異体で確認できるかを調べる。 これまでにrgk1との関連がみられた因子について、Racとの関連や、ARM成分への特異性について調べる。
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Causes of Carryover |
・平成27年4月、これまでの報告ではRgk1はcalcium channel beta subunitを介して働くと考えられたが、これに反し、遺伝学相互作用の結果では強い関与が見られなかった。本研究遂行上、Rgk1と相互作用する因子に関する知見が必要であるので、研究方式を見直し、変異体を用いた相互作用因子の探索について候補データの見直しの上で拡大した形で遂行した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定していた平成28年度経費と合わせて、変異系統の作成、維持、増殖に用いる試薬、培地を購入する。またRgk1とcAMP経路の関係を調べるための検査試薬の購入に充てる。
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Research Products
(1 results)