2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K06719
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
島崎 琢也 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (00324749)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神経幹細胞 / グリア / 分化 / マーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は神経幹細胞が発生の進行とともにグリア細胞へ分化しやすくなる機構の解明を目指したものであり、未だその存在が明らかでないグリア前駆細胞、あるいは幹細胞がグリアへ分化する遷移状態を捉える方法の開発を目的として行われている。我々が開発したマウスES細胞からの神経幹細胞(NSC)分化誘導系では、胚様体形成を介してNSCを含む前駆細胞群をneurosphere法という細胞凝集塊を形成する浮遊培養系によって選択的に培養増殖させることが可能であるが、その1次neurosphereはほとんどニューロンにのみ分化し、継代培養を繰り返すことによってグリアへの分化が優位になっていく。我々は既に、この分化能変化にはオーファン型核内受容体の一種であるCOUP-TFIおよびCOUP-TFIIの発現上昇が必須であり、その下流でマイクロRNAの一種であるmiR-17/106の発現抑制が必要であることを示していた。また、グリア分化優位になったneurosphereにmiR-17/106を強制発現すると神経分化優位に戻り、逆に1次neurosphereにmiR-17/106によって発現が抑制されるp38 MAP-Kinaseを強制発現させるとグリア分化能が現れる。そこで、miR-17の強制発現、Coup-tfI/IIのノックダウンの有無、およびp38の強制発現によって変化する遺伝子発現のDNAマイクロアレイによる比較解析をneurosphere集団で行った結果、グリア前駆細胞、もしくは神経幹細胞のグリアへの分化の指標となる可能性のあるマーカー遺伝子候補を12個まで絞り込み、さらにin situ hybridizationによる発現解析により、最終的に1個まで絞り込むことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
グリア前駆細胞のマーカー候補となる遺伝子を1個までに絞り込むことができたが、マウスES細胞へのレポーター遺伝子の遺伝子ノックインによる発現解析がまだ進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
同定した、グリア前駆細胞マーカー候補の遺伝子発現を模倣するようにKusabira Orange(KO)と伝子組換え因子の1つであるCre遺伝子を同時に発現するマウスES細胞を、遺伝子ノックイン(KI)によって作成し、まずは、in vitro分化系を用いてそれらのKO発現細胞の分化能およびCre の組換えによる分化系譜の解析を行う。このようにして、グリア前駆細胞マーカーとなりうることを確認した後、そのES細胞を利用してKIマウスを作成し、Creによる組換えにより蛍光タンパク質であるmTFPを発現するマウスと交配し、当該マーカー発現前駆細胞の発生期における分化系譜の解析を行う。また、グリア前駆細胞特異的と呼べるマーカーを同定できなかった場合は、上記のKO-Cre-KI ES細胞を用いて、最もグリア前駆細胞における発現が高いと思われる候補遺伝子のそれよりKIマウスを作成し、他前駆細胞マーカーとの組合せによるグリア前駆細胞の単離・精製を試みる。
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Causes of Carryover |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遺伝子組換えES細胞の作成から遺伝子改変マウスの作成および飼育等に至るまで、必要な物品費用として充当する。
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