2016 Fiscal Year Research-status Report
海馬神経新生における軸索ガイダンス因子draxinの機能解析
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15K06733
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
俵山 寛司 東北大学, 医学系研究科, 助教 (20402414)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | draxin / DCC / hippocampal neurogenesis / neuronal cell death |
Outline of Annual Research Achievements |
海馬歯状回は一生涯にわたり新たな神経細胞が生み出される組織であるが、これらの新生神経細胞は、記憶の形成やストレス抑制など、生体にとって重要な役割を担っていることが知られている。超高齢化社会を迎える我が国では、海馬の萎縮を伴う認知症や鬱病などの疾患患者数が急増しており、海馬における神経新生メカニズムを解明することは、これらの疾患への対処法を見出す上でも急務となっている。 以前我々は、新規軸索ガイダンス分子であるdraxinを同定し、そのノックアウトマウスの表現型解析の結果から、draxinが海馬形成に必要不可欠であることを見出した。本研究課題では、海馬神経新生におけるdraxinの役割を解析し、draxinが新生神経細胞の生存を維持・促進すること、また、その作用がdraxin受容体であるDCCを介することを見出した。DCCは依存性受容体としての性質を有し、リガンド非存在下においてはその発現細胞に細胞死を引き起こす。DCCは分化途中にある海馬神経幹細胞に発現することから、draxinがDCCリガンドとして機能し、細胞死を抑制することで生存促進作用を発揮するものと考えられた。さらにDCC誘導性アポトーシスの分子メカニズムを調べたところ、DCCの細胞内ドメインに存在するカスパーゼ標的部位の関与を見出し、この知見は先行研究と一致した。 以上、我々の研究結果から海馬神経新生制御に関わる新たな分子メカニズムの一端が明らかとなり、今後、海馬神経新生の減弱を伴う神経疾患に対する方策を見出す上での有用な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在リバイス実験に取り組んでいる最中であり、当初の研究計画通り、科研費最終年度である本年度中にアクセプトに至ると見込んでいる。よって、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度から本年度にかけ、海外のラボからDCC以外の受容体候補分子であるneogeninの遺伝子破壊マウスを導入し、同マウスにおける海馬での表現型を調べる予定であった。しかし、分化誘導させた海馬神経幹細胞株を用いたin vitro実験の結果、neogeninの強制発現およびノックダウンは同細胞のアポトーシスに何も影響を与えなかったことから、draxin KOマウスにおける海馬表現型にneogeninは関与していないと判断し、neogenin KOマウスの導入を取りやめた。本年度は全てのエフォートをリバイス実験に充てる。
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Causes of Carryover |
海外のラボから遺伝子破壊マウスを導入する予定になっていたが、研究計画の変更のため、未使用額が生じた。また、ディスカウント期間中に試薬をまとめて購入することで、支出額を減らすことができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
リバイス実験のため新たに抗体や試薬類を購入する必要があり、未使用金はその費用に充てる。
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Research Products
(3 results)